2019年9月30日号
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Prologue
潜在利用者24億人、フェイスブックのリブラが国家に突きつけた挑戦状
米フェイスブックが構想を明かしたデジタル通貨「リブラ」が大きな波紋を呼んでいる。各国政府や中央銀行からは警戒する声が相次ぎ、封じ込めようとする動きが広がる。それはお金の裏付けとなってきた「信用」を巡る暗闘でもある。
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part1
勃興する独自通貨経済圏、デジタル技術が生むリブラの「相似形」
ブロックチェーン、QRコードなどの技術進化で、日本でもデジタル通貨が次々誕生している。現在は日本円で価値を保証するものがほとんどだが、円から「独立」することはないのか。海外では民間のデジタル通貨に政府が対抗するような動きも浮上、せめぎ合いが始まっている。
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interview
マネックス松本会長、一橋大・野口名誉教授が語る「リブラの破壊力」
面白い、仲間に加わりたい──。リブラというデジタル通貨をフェイスブックが計画しているニュースを聞いた時、直感的にそう感じた。リブラ協会のメンバーの中に知り合いがいたので、すぐに連絡してフェイスブックの担当者を紹介してもらい、リブラ協会に加盟申請した。
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column
通貨の歴史が映し出す「お金の価値」とは
貨幣には様々なモノが使われてきた。その歴史には人類の試行錯誤がうかがえる。ただ、その価値の裏付けは変わりゆく。皆が「価値がある」と信じればお金となる。
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part2
MMTが象徴する「大きな国家」に反発、国家に挑む者たち
MMTに象徴される「大きな国家」に反発し、新たな“国”の建設を進める一団がいる。「自由市場」「最小国家」「社会的寛容」を重視する米国のリバタリアンである。小規模州の“乗っ取り”と海上都市構想──。リブラ登場の裏で既存のシステムが揺らぐ。
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part3
“仮想国家”をつくるエストニアの挑戦
人々が国を離れて流動化しつつある世界で、「選ばれる国」を目指すのがエストニアだ。同国の最大の武器は、オンラインでの電子的なやり取りを円滑化する「信用のインフラ」。自国民のために磨き上げてきた行政サービスを世界に開き、仮想的な市民を集め始めた。
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エストニアが“未来”をつくる歴史的必然
デジタル技術を駆使した「信用のインフラ」を構築し、領土と国民から成る物理的な国家とは別の階層で、世界中の人々が参加できる仮想国家をつくる──。エストニアがそんな取り組みを推し進める背景には、この国ならではの歴史的経緯がある。
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column
通貨の将来は脳内物質が決める?
脳のメカニズムから人間の「欲」を解明し、経済活動の分析に役立てようという学問がある。お金のことを考えると「ドーパミン」と呼ばれる快楽物質が脳内で分泌されるという。
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Epilogue
お金が消える日 「信用」が可視化されると何が起こるか
データがモノの価値を解析し、取引を記録するようになれば、通貨の役割は変わる。無機的な数字にすぎないお金に、使い手の「信用」が映し出されるようになる。国家に頼らずとも信用が担保される社会が実現すれば、「お金」は不要になるかもしれない。