シリコンバレーの「メインバンク」といえる存在だった米銀シリコンバレーバンクが3月10日、経営破綻した。バイデン米大統領が演説で「預金全額保護」という異例の措置を表明したが、先行き不透明感は拭いきれない。シリコンバレーのエコシステムは維持できるか。金融システム不安は連鎖しないのか。動揺は尾を引きそうだ。

米カリフォルニア州サンタクララの米シリコンバレーバンク本店(写真=AP/アフロ)
米カリフォルニア州サンタクララの米シリコンバレーバンク本店(写真=AP/アフロ)

 米国時間3月10日午前、米銀シリコンバレーバンク(SVB)のパロアルト支店前。15人ほどの預金者が小雨の中、落ち着かない様子で支店の前を行ったり来たりしていた。スタートアップの財務担当者だと話した男性は「9日夕方に依頼した送金が止まっている」として預金の行方を不安がる。預金額は明かさなかったが「少なくはない」と打ち明けた。

 米カリフォルニア州サンタクララの本店にも、預金者が詰めかけていた。10日早朝に米連邦預金保険公社(FDIC)がSVBの経営破綻を発表し、米国の金融市場に衝撃が走った。米連邦準備理事会(FRB)によれば同社の総資産は2022年末時点で約2090億ドル(約28兆円)。全米16位の資産規模を持つ。米国の銀行破綻では08年9月の金融危機で経営破綻したワシントン・ミューチュアルに次いで史上2番目の規模だ。FDICが監督する銀行では20年10月に破綻したアルメナ州立銀行以来、2年半ぶりの破綻となる。

 FDICが破綻管財人となり、上限付きの預金保護を発動。保護上限は1つの口座当たり25万ドルで、預金者からのアクセスは3月13日に再開するとした。

 12日には、米シグネチャー・バンクも預金流出により破綻。多くの預金者が不安を抱きながら待っていた12日午後、事態は急展開した。

急転直下の預金全額保護

預金全額保護という異例の措置を発表したバイデン米大統領(写真=AFP/アフロ)
預金全額保護という異例の措置を発表したバイデン米大統領(写真=AFP/アフロ)

 米財務省などが「預金の全額保護」の公式声明を発表。機能不全が金融システム全体に波及する「システミックリスク」を避けるための例外措置としたのだ。声明によれば、イエレン米財務長官がバイデン米大統領と協議の結果、預金全額保護を承認した。「3月13日から全ての資金にアクセスできるようになる」とし、「SVBの破綻処理に伴う損失が納税者に負担されることはない」と明言した。