世界の自動車メーカーが動向を注視する、欧州連合(EU)の環境規制。2035年に内燃エンジン車の新車販売の禁止を予定するなど、電気自動車(EV)シフトを進める。狙いは何か。課題はどこか。環境規制を統括する欧州委員会のティメルマンス上級副委員長に聞いた。

フランス・ティメルマンス氏
フランス・ティメルマンス氏
1961年生まれ。87~90年にオランダ外務省の政策担当官、90~93年、ロシア・モスクワのオランダ大使館の2等書記官。2012~14年にオランダ外相。14~19年に欧州委員会の第1副委員長として法律などを担当。19年から上級副委員長。EUの環境政策を統括する。(写真=AP/アフロ)

欧州連合(EU)は2035年に内燃エンジン車の販売禁止という規制導入を進めています。自動車各社や消費者は対応できると思いますか。

 はい。移行の可能性を徹底的に分析しました。多くの自動車メーカーが35年より前に排出ガスフリーになるでしょう。30年より前にその目標を設定しているメーカーもあり、そのすべてが排出ガスフリーを達成できると思います。

 基本的には2つの技術に基づいています。一つはEVで、最も普及するでしょう。もう一つは燃料電池を使った水素ベースの技術です。(欧州には)日本の自動車メーカーと密接に連携して、最高の技術を開発しているメーカーもあります。

 私たちにとっては、35年というターゲットが一般的に良い目標だと受け止められています。(二酸化炭素と水素で作る)eフューエルの利用などについての議論もありましたが、経済的な観点からあまり意味がないことが分かりました。

35年以降、eフューエルを使う車をどう扱いますか。

 (eフューエルは)恐らく内燃機関を使います。こうした自動車が欧州で造られることはないでしょう。通常、自動車のライフサイクルは最長15年程度ですから、EUで排出ガスゼロを達成したい50年までには、完全にクリーンな車両を保有することができるようになるのです。

 eフューエルは(製造過程で)多くの電力が必要であり、自動車やバンにとって非常に非効率的です。そして、航空業界で需要が大きくなります。ですから私たちは、ニーズが大きいと思われる航空産業で、eフューエルの可能性を追求したいと考えています。

HVの新車販売も禁止に

ハイブリッド車(HV)の新車販売が35年に禁止されることについては、最終的には各国の判断に委ねられるのでしょうか。

 いえ、これはEU全体の決定事項です。HVは今すぐ市場から撤去されるわけではなく、まだそこにあります。ただ、35年時点では、新しいHVは市場に出回らなくなります。35年以降もしばらくはそれ以前に発売されたHVが市場に出回りますが、新車は販売できません。

タイヤやブレーキパッドから飛散する粒子状物質を規制する「ユーロ7」も導入します。この規制は、今後強化される可能性がありますか。

 欧州委員会の内部で取り組んでおり、まだ提案はしていません。私たちがやりたいのは、パワートレインに関係なくすべての乗用車に適用される基準を打ち出すことです。