米プロフットボールNFL最大のイベント「スーパーボウル」が2月12日、米アリゾナ州グレンデールで開催された。1億人以上が観戦するといわれる試合の合間に流れる「テレビCM」からは、米消費動向の変化が読み取れる。「クリプト(暗号資産)ボウル」と呼ばれた2022年とはがらりと変わって、23年はIT関連企業のCMが激減した。

 「動画配信サービスの台頭でテレビのCM効果は薄れているが、スーパーボウルは別だ」。コミュニケーション学を研究する米ボストンカレッジのマイケル・セラジオ准教授はそう語る。各社が膨大なマーケティング費用をかけて生み出すスーパーボウルのCMは、米国におけるビジネスや消費動向の縮図ともいえる。

 CMの内容を前年と比べると、変化が如実に分かる。IT関連、特に暗号資産(仮想通貨)分野の広告が激減したのだ。米FTXトレーディング、米コインベース・グローバル、シンガポールのクリプト・ドット・コム。2022年は一部で「クリプト(暗号資産)ボウル」と呼ばれたほど、関連企業が多くのCMを出していた。

23年開催の第57回スーパーボウルではIT関連のCMが激減した
23年開催の第57回スーパーボウルではIT関連のCMが激減した

 FTXはその後、顧客が預けた資金を投資に使い込み、22年11月に経営破綻。仮想通貨市場は冷え込んだ。23年のCMを見ると、FTXはもちろん、コインベースなど他社も姿を消している。メタバース関連のスタートアップが果敢にCMを流していたが、これらはレアケースといえる存在だろう。

 米アマゾン・ドット・コムは音声AI(人工知能)の「アレクサ」、米メタはVR(仮想現実)ヘッドセットの「メタクエスト2」のCMを22年に出していた。いずれの事業も、22年後半に市場から「過剰投資である」という指摘を受ける場面が増えていた。

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