ウクライナ危機後、電力やガスの価格が高騰し、多くの新電力が経営破綻した欧州。こうした中、英国の新電力であるオクトパスエナジーは顧客数を増やし、世界でも注目を浴びる存在となりつつある。東京ガスが出資し日本市場へも参入している同社の成長の原動力は何か。

 エネルギー危機に見舞われる欧州で特に深刻なのが英国だ。電力・ガス価格が急上昇し、新たに市場参入した新電力がこの1~2年で10社以上経営破綻した。調達コストが膨らみ、売れば売るほど赤字が膨らむ逆ざやに陥ったためだ。

 新電力は総じて安さが売りだが、自社電力を持たないため調達コストが膨らみやすい。日本も含め、規模の小さな新電力には持続可能性がないという雰囲気が広がりつつある。

ピンク色のタコのキャラクターが目立つ英国のオクトパスエナジー本社(写真=永川 智子)
ピンク色のタコのキャラクターが目立つ英国のオクトパスエナジー本社(写真=永川 智子)

 そんな逆風下でも規模を拡大しつつある新電力が英国にある。2016年創業のオクトパスエナジーだ。名前のインパクトから謎めいた印象を受けるかもしれないが、競争の激しい英国のエネルギー小売業界で着実に顧客を増やしている。21年4月期の売上高は前年同期比62%増の20億ポンド(約3200億円)。英国で約220万世帯に電力・ガスを供給し、電力大手から顧客を奪いつつある。

 経営破綻した新電力バルブエナジーを22年12月に買収し、約150万の顧客を引き継ぐ見込みだ。東京ガスから出資を受け、21年には日本で共同出資会社を設立した。既に13カ国で事業を展開している。

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