日本政府が700億円を支援する最先端半導体の国産化プロジェクトが動き出した。回路線幅2ナノ(ナノは10億分の1)メートルの半導体について技術開発・量産を目指す。2027年に製造受託会社として事業化するが、国内勢はかつて微細化競争で敗れ、苦杯をなめた過去がある。

ラピダスの社長に就いた小池淳義氏。国内の半導体業界には微細化競争で敗れた過去がある(写真=半導体:アフロ、小池氏:日刊工業新聞/共同通信イメージズ)
ラピダスの社長に就いた小池淳義氏。国内の半導体業界には微細化競争で敗れた過去がある(写真=半導体:アフロ、小池氏:日刊工業新聞/共同通信イメージズ)

 「情熱は痛いほど分かるが、工場を建設しても国内の顧客のみでは生産能力を持て余す。グローバル企業から受注するためのマーケティング戦略が課題」。国産化プロジェクトの中心となる新会社、Rapidus(ラピダス)の小池淳義社長(70)と同世代の半導体メーカーOBは国産化についてこう話した。

 同社にはトヨタ自動車やNTTなど8社が計73億円を出資した。日米連携に基づき、米IBMなどと2ナノ世代の集積化・量産技術を開発する。台湾積体電路製造(TSMC)と米インテル、韓国サムスン電子という世界3強しか製造できない最先端領域に飛び込んで、国内半導体産業を復活させるシナリオを描く。

 小池氏は日立製作所の半導体生産技術畑で、日立と台湾ファウンドリー、聯華電子(UMC)の製造合弁会社トレセンティテクノロジーズで量産を指揮したベテランだ。

 経済安保のために最先端の半導体が重要なのは疑う余地がない。だが、研究開発から量産、ファウンドリービジネスまで一貫して手掛ける構想に経済性、合理性はあるのだろうか。

 国内の電機、半導体メーカーが巨額の負担に耐えられず、演算用のロジック半導体を巡る最先端領域の研究開発と量産から退いて約10年がたっている。世界の主力企業が淘汰の波の中で集中する事業領域を見いだしたように、日本企業も生き残るために取捨選択を重ね、ルネサスエレクトロニクスのマイコンやアナログ半導体、東芝のNAND型フラッシュメモリーなど現在の姿にたどり着いたはずだ。

 小池氏も2000年設立のトレセンティでファウンドリー事業を進めようとしたが、受注が低迷。UMCが事業から撤退したという経験がある。

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