中国の比亜迪(BYD)がパリ国際自動車ショーで欧州市場への本格参入を発表した。中国でのEV販売が急増し、世界のEV販売シェアは米テスラに次ぐ2位につける。欧州でも販売を伸ばせば、自動車産業の勢力図を塗り替えることになりそうだ。

10月17日に開幕したパリ国際自動車ショー。会場を訪れた欧州自動車大手ステランティスや伊フェラーリの会長を務めるジョン・エルカン氏は、中国の比亜迪(BYD)や長城汽車の電気自動車(EV)の運転席に座り、内装を見たり中央のパネルを触ったりして回った。
自動車業界で今、最も注目されている企業の一つがBYDだ。もともとEVに力を入れてきたが、2021年後半から販売台数が急伸。22年1~6月のEV販売台数は32万台と米テスラに次いで世界2位につけた。
そして今回、本格的な欧州進出を宣言した。22年末までにドイツで、23年からは英国やフランスでも販売を始める。多目的スポーツ車(SUV)「唐(TANG)」、スポーツセダンの「漢(HAN)」、SUV 「ATTO3(アットスリー)」の3車種を投入する。
本気度が垣間見えたのが、充電サービスだ。エネルギー大手の英シェルと共同で約30万基の充電ステーションをBYDユーザーが利用しやすくする仕組みを導入。2000人の顧客を対象とする無料充電サービスの展開も発表した。テスラがEV販売を伸ばしている要因の一つに、独自の充電ネットワークの整備がある。BYDはこの成功例を踏襲しようとしているようだ。
世界のEV市場は22年に600万~700万台の新車販売台数に達する見込みで、「3強」が存在感を発揮している。テスラと独フォルクスワーゲン(VW)、韓国の現代自動車グループだ。自国以外で販売台数を伸ばしていることが共通点だ。テスラは米中欧に工場を構え各市場で販売を伸ばし、VWは中国や米国でEV販売台数を増やしつつある。現代グループは米国や欧州でEV販売が好調だ。BYDが欧州で販売を伸ばせれば、「EV4強」を構成することになる。
BYDは1995年に王伝福氏が創業。携帯電話向けリチウムイオン電池の供給で実績を積み、2008年には米著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる投資会社グループが出資したことで注目された。自動車会社を買収し、電池からEV生産までを手掛けられる垂直統合モデルに強みがある。電池調達に苦労するEVメーカーが多い中で、自社製電池を搭載できる強みを発揮している。
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