独ボッシュが電気自動車(EV)へのシフトなどに伴い、全社的に従業員のリスキリング(学び直し)を進めている。世界の40万人の多くがトレーニングの対象で、10年間でおよそ20億ユーロ(約2800億円)を投資する。ドイツでは個々の企業だけではなく、複数企業が横断して人材配置や再教育に取り組む枠組みが活発になっている。

ボッシュは従業員のリスキリングのために、社内で様々な研修コースを用意している
ボッシュは従業員のリスキリングのために、社内で様々な研修コースを用意している

 自動車産業では、電気自動車(EV)シフトに伴い雇用が減るという悲観的な見通しがある。内燃エンジン車に比べて部品点数が減る分、開発や生産の要員が少なくなるからだ。

 その懸念は自動車大国ドイツで特に強い。同国内の自動車産業の従事者は約78万人とされる。独Ifo経済研究所は2021年、「30年までに内燃エンジン関連の21万人分の雇用に影響が出る可能性がある」と警告した。ただこの予測は「自動車メーカーがEVへの移行と従業員の再教育を十分かつ迅速に行うことができなければ」との前提付き。そのため、関連する企業は従業員の再教育に力を入れている。

 大胆なのが自動車部品世界最大手の独ボッシュだ。世界約40万人の多くをトレーニングの対象とするなど、リスキリング(学び直し)に力を入れている。21年までの5年間で10億ユーロ(約1400億円)を投じてきたが、今後5年間でさらに10億ユーロを投資する予定だ。人事担当取締役、フィリズ・アルブレヒト氏は「従業員の技術や適性をどう新技術に生かすかを常に考えている」と述べる。

 例えば、かつて内燃エンジンの開発部門に所属していたセリーナ・イエーツさんは現在、2つの仕事を持つ。1つはEVのインバーター向けのソフトウエアで、製造現場にサンプルを持ち込み量産の準備を進めている。もう1つはプロトタイプのソフトのバグの解消。「新時代を切り開くEVエンジニアとして働くことに興奮している」と話す。

 内燃エンジンのエンジニアとしてキャリアを積んできたイエーツさんは自らEV関連のポジションを希望した。20年11月から3カ月間、社内の教育施設での週3回の授業でEVの基礎知識を身に付け、11のモジュールについて学んだという。EVとエンジン車を乗り比べて違いを確かめる授業もあった。イエーツさんは「内燃エンジンからEVにシフトしたいと考える機会にもなった」と振り返る。研修と並行して新たな職場でも週に1回働くことで専門知識を深め、21年2月から新しい仕事に移行した。

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