政府は私的整理に関し、債権者の全員の同意を求めない新たな法整備を進める方針を公表した。コロナ後、企業の事業再生が本格化する前に、法整備を通じて産業の新陳代謝促進を目指す。憲法上の「財産権の保障」の問題や、少数債権者の意見反映の仕組みづくりなど、実現に向けたハードルは高い。

新しい資本主義実現会議に出席する岸田文雄首相(写真=共同通信)
新しい資本主義実現会議に出席する岸田文雄首相(写真=共同通信)

 政府は10月4日、「新しい資本主義実現会議」の会合で、金融機関との協議で企業債務を整理・軽減する私的整理に関し、新たな法整備を進める方針を公表した。私的整理は民事再生などの法的整理に比べると手続きが簡便で、事業価値の毀損を回避できる点がメリット。だが債権者全員の同意が必要で、調整に手間がかかる。これを債権者の多数決による決議で済むようにし、時間をかけずに企業の事業再生を進められるようにする。欧米や韓国では、全債権者の同意を不要とする企業再生制度が浸透している。

 法整備を急ぐ背景には、今後中小企業を中心に、事業再生が本格化するだろうという政府の危機感がある。新型コロナウイルス禍で売り上げが減った企業を支援するため、2020年3月に始まった実質無利子・無担保で融資する「ゼロゼロ融資」の返済が、これから来年にかけてピークを迎える。持続化給付金など、資金繰りを支えてきた各種政策メニューもなくなる中、企業はコロナ禍が収束しない状況の中「稼ぐ力」を取り戻さなければならなくなった。

 コロナ禍で、企業の過剰債務の総額は21年末時点で76兆円増えたとの試算もある。身の丈を超えた負債を抱えたままだと、事業再構築に向けた新たな資金調達も難しくなり、経営の自由度も狭まる。経営破綻の回避や企業の立ち直りを支援する観点からも、迅速な債務整理が実現できる多数決制の導入が求められる。

次ページ 法務省が難色示す