「投機にすぎない」。所有者を記録するデジタルデータ、NFT(非代替性トークン)にそんな批判を投げかける人は多い。過熱した暗号資産(仮想通貨)への投資ブームが落ち着く中、NFTの流通価格も歩調を合わせて下落し始めている。市況の沈静化を商機と捉え、顧客の囲い込みなど「ビジネスにNFTを生かす好機」とする考え方がじわり広がってきた。
ガレージ内の車体から雷鳴のようなエンジン音が響く。英レーシングチームのマクラーレンでNFTとデジタル権利を担当するマックス・ウォルフ氏は「今ではこの轟音(ごうおん)を聞いて、『どうしたらこれをトークン化できるか』と考えるようになった」と語る。
NFTは画像や音楽などのデジタルデータに所有者の情報を記録した暗号資産。ビットコインなどの仮想通貨に使われるブロックチェーン技術を応用し、誰がデータの所有者であるかを世界中で共有する。


マクラーレンは2021年10月からレースカーなど3D画像のNFTを販売してきた。22年7月1~3日のF1シリーズ英国グランプリでは、レース会場との連動企画を展開。レーサーが着用するヘルメットやスーツの3D画像を販売し、購入者の特典として抽選でガレージに招待した。ファン垂ぜんのイベントに、SNS(交流サイト)上のコメント欄では熱狂的に歓迎する声が上がった。
「NFTは共通の関心を持つ愛好者たちを結びつける鍵になる」とウォルフ氏は予見する。今後はVR(仮想現実)で新しい体験を生み出すプロジェクトも計画しているという。
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