この記事は日経ビジネス電子版に『プーチン氏焦燥、牙むく西側IT企業 デジタル安全保障の脅威に』(5月27日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』6月6日号に掲載するものです。

米オラクルや独SAPなど欧米のIT(情報技術)製品を導入したロシア企業の業務に支障が出ている。ウクライナ侵攻に反発して欧米IT各社がロシアでの製品販売や技術サポートを取りやめたからだ。プーチン大統領は自国IT産業の育成を急ぐ。果たして日本の「デジタル安全保障」は大丈夫だろうか。

ロシアのプーチン大統領は5月20日にビデオ会議形式で安全保障会議を開いた(写真=ロイター/アフロ)
ロシアのプーチン大統領は5月20日にビデオ会議形式で安全保障会議を開いた(写真=ロイター/アフロ)

 ロシアによるウクライナ侵攻の影響で穀物や原油などの価格が高騰していることを受け、食料安全保障やエネルギー安全保障の問題がにわかに注目を集める。日米両政府が5月23日の首脳会談後に発表した共同声明でも、「エネルギー及び食料の安定的な供給を確保するための国際社会による最近の取り組みを歓迎した」との一文をわざわざ盛り込んだ。

 食料やエネルギーに比べればあまり話題に上らないものの実は今、不測の事態が起きてもIT製品を安定的に確保する「デジタル安全保障」の重要性を再認識すべき深刻な事態が生じている。震源地はロシアだ。

 同国のプーチン大統領は5月20日に開いた安全保障会議で、「(西側のIT製品を)自国製の機器や技術、ソフトウエアに切り替えていかねばならない」と危機感をあらわにした。

 背景にあるのが、ウクライナに侵攻したロシアに対する日米欧など西側諸国による経済制裁である。その一環で先端技術を使った製品をロシアに輸出するのを禁止した。加えて米マイクロソフトや米オラクル、独SAPなど欧米IT企業は自主的にロシアでの製品の提供や技術サポートを取りやめた。

 プーチン氏は「西側のIT企業の多くがロシアにある製品のサポートを一方的に停止した。機能が制限されたり使用できなくなったりする事例が増えている」と恨み節を口にする。

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