この記事は日経ビジネス電子版に『原発「復権」東南アジアでも 脱炭素と安定供給、両立の切り札に』(5月20日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』5月30日号に掲載するものです。

フィリピンで30年以上にわたって放置されてきた原発が近い将来、動き出すかもしれない。原発を脱炭素に向けた「切り札」として活用しようと、アジア各国が導入に関心を示し始めた。乗り越えるべき課題は多いが、この地域が技術保有国にとって有望な市場になる可能性はある。

 5月9日、6年に1度のフィリピン大統領選の投開票が行われた。制したのは、かつて同国で圧政を敷き「独裁者」として知られた故マルコス元大統領の息子フェルディナンド・マルコス氏(通称ボンボン・マルコス氏)。ソーシャルメディアでは独裁時代がフィリピンにとって「黄金時代」だったという言説が支持され「息子であれば父が残したレガシー(遺産)を引き継いでくれる」(23歳教員)という期待が高まった。

 首都マニラから西に直線距離で約80kmの場所に、この「遺産」を象徴する施設がある。東南アジアで唯一の商業用原子炉として知られる、バターン原子力発電所だ。1984年に完成したものの、2年後に故マルコス元大統領が失脚し、さらに同年、チェルノブイリ原発事故が起きたことで、一度も稼働することなく打ち捨てられた。

フィリピンのマニラ近郊にあるバターン原子力発電所(写真=Pacific Press/Getty Images)
フィリピンのマニラ近郊にあるバターン原子力発電所(写真=Pacific Press/Getty Images)

 この場所がにわかに注目を浴びている。2020年、原子力発電に関心を寄せたドゥテルテ大統領はバターン原発の調査を指示。ボンボン・マルコス氏も稼働に意欲を示す。バターン原発が長い眠りから覚めるとすれば、ボンボン・マルコス氏は「黄金時代の復活」という物語をより説得力を持って示すことができるだろう。

 もっとも、原発に関心を示しているのは国内の政治的な理由だけではない。

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