この記事は日経ビジネス電子版に『ITユニコーン不足の日本、なくせるか「起業家に不利な金融契約」』(4月25日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』5月2日・9日号に掲載するものです。

経済産業省や日本経済団体連合会(経団連)がスタートアップ企業育成の指針や目標を打ち出した。世界で勝てる新たな日本企業が少ない理由として、ファイナンスの様々な課題に着目する。スタートアップへの出資時に、起業家が不利になるような条項をなくすよう求めている。

経団連の南場副会長はVCによる一層の支援が必要と説く
経団連の南場副会長はVCによる一層の支援が必要と説く

 経済産業省は4月、起業家にとっての資金調達の注意点をまとめた「スタートアップの成長に向けたファイナンスに関するガイダンス」を公表した。資金調達時に投資家に説明すべきことは何か、企業価値を適正に算定できないと経営にどんな影響があるか、ベンチャーキャピタル(VC)や経営者の持ち分の在り方とは──。3月に公正取引委員会と示した指針と併せ、マネーを円滑に活用できるよう支援する。

 国内のスタートアップへの投資額は2021年に7801億円と、過去5年で3.1倍に拡大した。ただ、米国の42兆円、中国の13兆円と比べてまだ小規模だ。

 未上場で企業価値が10億ドルを超えるユニコーンは22年2月時点で米国に520社、中国に167社あるが日本は6社しかない。米国や中国、インドで電子決済やデータ活用などIT(情報技術)系のユニコーンが増え、世界で活躍する一方、日本勢のグローバルな展開は目立たない。

 経団連は3月、27年までに日本のスタートアップの数を現在の10倍の約10万社、スタートアップへの年間投資額を約10倍の10兆円規模にする目標を掲げた。

 突破すべき壁として、経団連もファイナンス問題に目を向けている。副会長であるディー・エヌ・エーの南場智子会長は記者会見で「日本の企業価値トップ10社を見ると、創業時にVCが支援してこの規模に成長したケースが1件もない」と嘆いた。世界では企業価値トップ10のうち米アップルなど8社が、上場する前にVCから支援を受けていた。

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