この記事は日経ビジネス電子版に『23年春にJR東西、東京メトロも値上げへ 改定手法は各社各様』(4月26日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』5月2日・9日号に掲載するものです。

JR東日本やJR西日本、東京メトロが相次いで運賃引き上げを表明。2023年春は、鉄道業界では久々の“値上げラッシュ”となる。各社とも、国の認可が必要な「運賃改定」とは別の手法を選んだ。

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 JR東日本は2023年春から初乗り運賃を10円値上げする。東京メトロも同様の値上げを表明。ただし、鉄道事業法に基づく「運賃改定」ではない。21年12月に新設された「鉄道駅バリアフリー料金制度」を活用する。

 バリアフリー法では、1日の利用客数が10万人以上の駅にホームドアを早期に整備する目標が示されている。鉄道事業者は自助努力で整備を進めてきたが、新型コロナウイルス禍でその余力が失われた。そこで運賃に一定額を上乗せし、整備に充てるようにした。国土交通省の認可が必要な運賃改定とは異なり、届け出だけで実施できる。

 JR東では東京を中心とした「東京電車特定区間」のみを利用する場合に限り、普通運賃に10円上乗せ。増収額は年間230億円、13年間で総額2990億円を見込み、バリアフリー設備への投資額4200億円の一部を賄う予定だ。

 一方、JR西日本は315区間に設定している通常運賃より割安な「特定区間運賃」のうち、34区間の運賃を引き上げる。旧国鉄時代に私鉄と競合する区間に設定したものだが、現在ではJRのほうが割安になっていた。国交省から認可されている上限運賃の範囲内のため、割引運賃の廃止は届け出だけでよい。一部の乗客が私鉄に流出しても、年間10億円程度の増収が見込めるという。

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