この記事は日経ビジネス電子版に『半導体首位陥落のインテル 地政学リスク逆手に反転攻勢』(4月5日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』4月11日号に掲載するものです。

米インテルが半導体工場への投資に前のめりになっている。米・欧での新設を相次ぎ決定した。目指すは、多種多様な半導体を世界のあらゆる地域で供給できる体制だ。台湾・韓国勢に押されるかつての「王者」は、地政学リスクへのいち早い対応で挽回を期す。

アイルランドの工場で進む新棟の建設工事(上)と、米オハイオ州の新工場の構想図(下)
アイルランドの工場で進む新棟の建設工事(上)と、米オハイオ州の新工場の構想図(下)

 「我々に賭けることが地政学リスクの回避策になる」。米インテルのパット・ゲルシンガーCEO(最高経営責任者)は2022年2月に開いた投資家向け説明会で自社の価値をこう訴えた。

 その約1カ月後には、欧州での半導体の製造や研究開発に合計330億ユーロ(約4兆5000億円)超を投資する計画を発表した。10年間で欧州に800億ユーロを投じる計画の第1段階と位置付ける。

 170億ユーロでドイツ・マグデブルクに先端半導体の工場を新設するほか、アイルランド・リークスリップの既存工場に120億ユーロを追加投資して製造スペースを2倍に広げる。イタリアでは後工程(シリコンチップをパッケージに収める工程)の工場を新設する交渉を始めた。

自社製品もファウンドリーも

 ドイツとアイルランドの工場のどちらも、インテルが設計した半導体の製造のほか、他社が設計した半導体の受託製造(ファウンドリー)にも用いる。独BMWのオリバー・ツィプセ社長が「インテルが最先端の製造能力を欧州で確立することを歓迎する」とコメントを寄せるなど、半導体の大型製造拠点が少ない欧州の企業や政府は歓迎ムードだ。

 電子機器の心臓部であるプロセッサーなどのロジック半導体の分野で、自社設計した先端半導体に注力してきたインテル。かつての「王者」は、ファウンドリー最大手の台湾積体電路製造(TSMC)や韓国サムスン電子に押されている。世界の半導体市場が前年比で26%成長した21年、インテルの売上高は前年比1%増の747億ドルにとどまり、世界の半導体メーカーではサムスン電子に次ぐ2位に陥落した。最先端の製造技術の開発でもTSMCやサムスン電子に後れを取っている。

 21年2月に就任したゲルシンガーCEOは、ファウンドリー事業を拡大する戦略を即座に打ち出し、米アリゾナ州の新工場新設を発表。22年に入り、その動きを速めている。

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