この記事は日経ビジネス電子版に『値上げの春に背水の値下げ ワタミ「焼き肉界のサイゼ」目指す』(4月4日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』4月11日号に掲載するものです。

値上げが相次ぐ中、居酒屋大手のワタミが焼き肉業態で主力メニューの値下げを断行した。コロナ禍でも高い集客力があるとの期待で参入してから1年半、売り上げは伸び悩んでいた。全品390円(税抜き)以下と安さを前面に押し出す戦略で再挑戦する。

安さを前面に押し出した新戦略で客数の増加を狙う
安さを前面に押し出した新戦略で客数の増加を狙う

 「値上げをすれば客離れ。価格を守ってもお客さんは戻らない。座して死を待つことはせず、値下げを決定した」。3月29日に焼き肉業態「焼肉の和民」のリニューアルを発表した居酒屋大手、ワタミの渡邉美樹会長兼社長は、背水の陣に臨むような表情を見せて語った。

 「角切りハラミ」や「ロース」といった主力商品の価格を平均で2割下げる。多くの商品で量は減らさずに価格だけを下げ、看板商品の「ワタミカルビ」は増量する。外食や食品の値上げが立て続けに発表された「値上げの春」に、異例の値下げ敢行となった。

 焼肉営業本部長の新町洋忠執行役員は「目指すのは『焼き肉業態のサイゼリヤ』だ」と意気込み、全品390円(税込みでは429円)以下という安さを前面に押し出す戦略で客数増を狙う。想定する客単価は従来の3300円から2500円に下がる。

 ワタミが新業態として焼肉の和民を始めたのは2020年10月。コロナ禍で居酒屋業態が低迷する中、換気が良いと判断され、家族客からの人気が高い焼肉店の集客力に期待してのスタートだった。22年3月末時点で26店舗を展開しているが、売り上げは伸び悩んでいる。この1年間、焼き肉業態の店舗の売上高が業態転換前の19年比でプラスになった月はなかった。

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