この記事は日経ビジネス電子版に『日銀、「指し値オペ」が呼び込む円安 くすぶる政策修正の思惑』(3月29日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』4月11日号に掲載するものです。

大規模な金融緩和を続けてきた日銀を巡る情勢に大きな変化が生じている。手掛かりはドル円相場、物価上昇圧力の高まり、日銀の政策決定ポストの顔ぶれ、の3点。黒田東彦総裁の任期は2023年4月まで。政策の軌道修正に向けた地ならしは既に始まっているようだ。

参院予算委員会に出席した日銀の黒田東彦総裁(写真=つのだよしお/アフロ)
参院予算委員会に出席した日銀の黒田東彦総裁(写真=つのだよしお/アフロ)

 3月28日午前10時10分、日銀は指定した値段で国債を無制限に買い入れる「指し値オペ」を通知した。その途端、外為市場ではドル円相場が1ドル=122円台前半から後半へと50銭ほど一気に円安に振れ、その後一時125円台まで下落が続いた。

 国債買い入れは国債価格の下支えを通じた金利抑制を意味する。一方で米国は利上げを進めている最中だ。外為市場の原則「日米金利差の拡大は円売り要因」の通りに円安が進んだわけだ。

 日銀にとって指し値オペの発動は、これまで堅持してきた大規模緩和方針の姿勢を改めて示すという意味で既定路線。米国での金利上昇圧力が国内に波及するのを抑制する狙いだ。

 ただし、金融市場の参加者や一部の日銀ウオッチャーたちはそう単純には見ていない。企業や個人の購買力が低下する「悪い円安」論が広がりつつあるためだ。実際、3月25日には国会で黒田東彦総裁が「悪い円安」について質問を受けた。

 日銀の認識は「全体として円安にはメリットがある」。輸出企業の円建て収益にプラスになるためだ。ただそのメリットを享受できる個人や企業にはばらつきがあり、日銀への政治的な期待が「円高阻止」から「円安阻止」へと変化しかねない状況だ。

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