この記事は日経ビジネス電子版に『ウクライナ危機で食料供給に暗雲、小麦価格高騰の恐れ』(3月2日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』3月14日号に掲載するものです。

ロシアがウクライナに軍事侵攻して以来、小麦の先物取引価格が乱高下している。コロナ禍で既に値上がりしていた小麦の価格はどうなっていくのか。食料の多くを輸入に頼る日本は今後どうすればいいのか。資源・食糧問題研究所の柴田明夫代表に聞いた。

柴田明夫(しばた・あきお)氏
柴田明夫(しばた・あきお)氏
資源・食糧問題研究所代表

 ロシアとウクライナは小麦を多く輸出する穀倉地帯だ。ロシアの輸出量は年間約3500万トンで世界一。ウクライナも約2400万トンを輸出している。ウクライナへの侵攻が起こってから、(穀物価格の国際指標とされる)シカゴ商品取引所の先物価格が大幅に上がっている。ここまでの高値は2008年以来。利益確定売りで価格が下がるなど乱高下しているが、全体としてはじわじわと上がっていく傾向にある。

 小麦の価格は以前から上昇していた。米国やカナダ、ロシアでの干ばつ、コロナ禍での物流の停滞、中国の輸入拡大などの要因が重なった。ウクライナは小麦を増産して、過熱する市場の冷却剤のような役割を果たしてきたが、そのウクライナからの輸出が滞れば価格高騰はさらに進むだろう。1ブッシェル(約27キロ)当たり12ドル超となった08年2月の水準に達する可能性もある。

(写真=PIXTA)
(写真=PIXTA)

 北米やオーストラリアからの輸入が中心の日本も影響は避けられない。日本では輸入小麦のほとんどを政府が購入して製粉会社などに売り渡す仕組みで、価格は4月と10月に改定される。ウクライナ侵攻の影響が大きく出てくるのは22年10月以降だろう。ロシアやウクライナで生産されている小麦は初夏に収穫されるものだからだ。

 ロシアやウクライナはトウモロコシの輸出国でもある。トウモロコシを飼料にしている牛や豚の食肉価格も上がる見通しだ。ウクライナ侵攻で原油高が進んでいるため、代替燃料であるバイオエタノールの需要が高まることでさらにトウモロコシの需給が逼迫する可能性もある。

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