この記事は日経ビジネス電子版に『「捨てられた国」に米国代表として凱旋、北京五輪が映す中国の変化』(2月10日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』2月21日号に掲載するものです。
2月4日から開催された北京冬季五輪。北京市は夏と冬の五輪を開催した初の都市となった。中国国内では米国で育ちながら中国代表を選んだフリースタイルスキーの選手が注目を浴びた。2008年の夏季五輪開催から約14年。2度目の五輪は中国の成長と不安を映し出している。
北京冬季五輪が2月4日に開幕し、毎日熱戦が繰り広げられた。北京市は2008年に夏季五輪を開催しており、史上初めて夏と冬の五輪を開催した都市となった。14年という期間を経て再び開催された五輪は、この間の世界における中国の位置付けの変化を物語っている。
中国国内で注目された選手の一人が、フリースタイルスキー女子モーグルの米国代表として参加したカイ・オーウェンス選手だ。

04年8月22日、生まれたばかりの赤ちゃんが安徽省六安市の役所の前に置き去りにされていた。丸顔で二重まぶた、大きな瞳、黒髪で白い肌の女の子は養護施設で陸詩琪という名前をつけられて育てられたと地元メディアの安徽商報は伝えている。
2人目を産んだ場合に罰金を科すなどした「一人っ子政策」と呼ばれる産児制限を中国政府が実施していた時代だ。農村などでは2人目、3人目の子供が生まれても、戸籍に入れなかったり、場合によっては目立つ場所に置き去りにするケースもあった。
養護施設に米国人のオーウェンス夫妻が現れ、赤ちゃんを養子として引き取ったのはそれから1年と少したった05年10月10日のことだった。赤ちゃんには「カイ」という名前が与えられた。漢字では「凱」。勝利を意味する文字だ。
米コロラド州でウインタースポーツに親しみながら育ったオーウェンス選手はフリースタイルスキーで才能を開花させ、生まれた国で開催される冬季五輪に米国代表として参加することになった。
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