この記事は日経ビジネス電子版に『日本製EV電池に欧州危機 トヨタ・パナソニック連合CO2削減へ』(1月28日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』2月7日号に掲載するものです。

トヨタ自動車系の電池会社とパナソニック、豊田通商が、東京大学生産技術研究所と産学連携協定を結んだ。電気自動車(EV)などに使う車載電池の低炭素化・低コスト化とリサイクル促進のための技術開発を目指す。産学が国産「グリーン電池」の確立へ結集し、環境規制を通じて電池市場の覇権を狙う欧州に対抗する。

<span class="fontBold">トヨタとパナソニックが共同出資する電池会社PPES、パナソニック、豊田通商、東京大学生産研の4者が連携を発表した</span>
トヨタとパナソニックが共同出資する電池会社PPES、パナソニック、豊田通商、東京大学生産研の4者が連携を発表した

 1月26日、パナソニック、豊田通商と、トヨタとパナソニックが共同出資する電池会社のプライムプラネットエナジー&ソリューションズ(PPES)、東京大学生産研が包括的な産学連携研究協力協定を結んだ。

 「欧州の環境規制にしっかり対応していかねばならない」。発表会見の後、パナソニックの社内カンパニーで電池事業を手掛けるエナジー社の渡辺庄一郎副社長は、協定の狙いについて記者団にこう語った。

 具体的には、資源開発の段階から電池の製造工程を見直し、電池のリサイクル技術も抜本的に変える。EV市場が本格的に立ち上がる2025年をめどに新技術を確立させ、主要部材である正極材の生産とリサイクルの際に排出される二酸化炭素(CO2)をそれぞれ従来比5割減らす。電池業界の他の取り組みも合わせて30年には業界全体で8割減を見込む。

 背中を押したのは欧州の動きだ。欧州はEV産業の主導権を握るため、環境規制のルールメーキングを強力に推し進める。日本メーカーが強いハイブリッド車(HV)を含むエンジン車の新車販売の規制に動く一方、EVを巡っては欧州委員会が新たな「電池規則」の導入を進める。

欧州の「電池規則」に危機感

 24年7月以降、第三者の検証機関が証明した電池の「カーボンフットプリント」(CO2総排出量)を提出しないと、欧州連合(EU)域内ではその電池やそれを搭載したEVも流通できなくなる見通し。さらに、排出量が一定以上の電池の流通を制限。30年をめどに一定以上のリサイクル材の使用も義務付ける方針だ。

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