この記事は日経ビジネス電子版に『通貨価値300倍に 東南アジア発「リアルで稼げるゲーム」経済圏』(1月21日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』1月31日号に掲載するものです。

ブロックチェーンを活用した「Play to Earn(稼ぐために遊ぶ)」ゲームが東南アジアで人気を集めている。獲得したアイテムや通貨を現金に換えることもできるため、経済的に余裕のない人々の収入源になっている。人気の高まりを受けて新しいゲームが相次ぎ開発されており、プレーヤーは増加の一途をたどりそうだ。

<span class="fontBold">ブロックチェーンゲーム人気の火付け役となった「アクシー・インフィニティ」</span>
ブロックチェーンゲーム人気の火付け役となった「アクシー・インフィニティ」

 20代後半のタイ人男性、ソムチャイさん(仮名)は2021年半ばまでタイ国際航空のパイロットとして活躍していた。だが新型コロナウイルスは彼からキャリアを奪った。経営不振が続いていたタイ航空は20年5月に破綻し、リストラに着手。ソムチャイさんも対象となった。

 職を失ったソムチャイさんが生活の糧として注目したのはブロックチェーン技術を活用したゲームだった。1日の大半をゲームに費やし、21年は月平均2000ドル程度を稼いだという。「株式投資で一獲千金を狙うのは難しいが、ゲームであれば夢ではない」とソムチャイさんは語る。

 主にプレーしているのは「アクシー・インフィニティ」というベトナムのスタートアップ企業が開発したゲームだ。他のプレーヤーとの対戦に勝利したり、保有するキャラクターをマーケットプレイスで販売したりすることで「SLP」や「AXS」というゲーム内の通貨(トークン)を獲得できる。通貨やキャラクターはブロックチェーン技術を使って発行・流通・管理されているため、容易に偽造・改ざんできないようになっている。ゲーム内通貨は暗号資産(仮想通貨)取引所を介してタイバーツなど各国の法定通貨に交換可能だ。

<span class="fontBold">キャラクターは暗号資産として売買されている</span>
キャラクターは暗号資産として売買されている
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