この記事は日経ビジネス電子版に『中国選手の性被害告発で女子テニス協会が開けた「パンドラの箱」』(12月6日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』12月13日号に掲載するものです。
中国の有名テニス選手が共産党の元最高指導部メンバーを告発した後、一時消息不明になった。女子テニス協会は中国での大会開催は選手やスタッフへのリスクを伴うとして中止を決定。2022年2月に北京冬季五輪の開催を控え、事態を鎮静化したい中国政府にとって頭が痛い問題となっている。

「パンドラの箱を開けつつある」。中国共産党機関紙「人民日報」系の「環球時報」は12月2日、女子テニス協会(WTA)に対してこう警告した。世界の女子ツアーを統括するWTAのスティーブ・サイモン最高経営責任者(CEO)は同日、「WTA理事会の全面的な支持の下、香港を含めた中国で開催予定の大会をただちに停止する」と発表している。
サイモン氏は中国共産党の元高官から性被害を受けたと告発した中国の有名プロテニス選手、彭帥氏の安否が懸念される状況が変わっていないとして強硬な決断に踏み切った。


「残念だが、中国の指導者たちはこの非常に深刻な問題に信頼できる形で向き合っていない。居場所は分かったものの彼女が自由かつ安全で、検閲や強制、脅迫の対象になっていないかについての疑いは拭えない」(同氏)。中国における大会開催が選手やスタッフへのリスクを伴うと判断したとも述べている。
彭氏が中国共産党元最高指導部メンバー(中央政治局常務委員)で中国元副首相の張高麗氏から性的関係を強要されたとソーシャルメディアで告発したのは11月2日のこと。すぐに彭氏のアカウントは投稿ごと削除された。それから1カ月以上がたち、巨大市場からの撤退を通告するという異例の事態に至った。
WTAの決定に男子プロテニス協会(ATP)や国際テニス連盟(ITF)などが支持を表明した。選手や元選手では男子のノバク・ジョコビッチ氏やダニエル太郎氏、マルチナ・ナブラチロワ氏、ビリー・ジーン・キング氏などが賛同の声を上げている。
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