この記事は日経ビジネス電子版に『日本製鉄が盟友トヨタに突きつけた「知財チャイナリスク」』(10月19日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』11月1日号に掲載するものです。

日本製鉄が、電動車に使う電磁鋼板の自社特許侵害で、トヨタ自動車と中国・宝山鋼鉄を提訴した。日鉄はトヨタが1997年にハイブリッド車(HV)「プリウス」を発売して以来、電磁鋼板を納め続けてきた盟友だ。日本の産業界を代表する大手メーカーの間で勃発した特許紛争の背景に何があるのか。

(写真=つのだよしお/アフロ)
(写真=つのだよしお/アフロ)

 調達の手続きは適正だった──トヨタは当惑している。10月14日のオンライン会見で、担当者は「材料メーカー同士で協議すべき事案。弊社が訴えられたことは大変遺憾」と述べた。宝山製の電磁鋼板について「特許侵害がないことを製造元に確認の上、契約している」とする。

 日鉄は「自動車メーカーを特許侵害で訴えるのは初めてだが、技術開発の成果を守る必要がある」と主張する。サプライチェーン(供給網)に潜む知的財産の「チャイナリスク」をトヨタに突きつけた格好だ。

 電動車の駆動用モーターに使う電磁鋼板は回転効率を左右する重要素材だ。日鉄は関連特許を多数抱え、量産技術でもリーダーを自負する。

 もし東京地裁が日鉄の仮処分申請を認めると、国内におけるトヨタの電動車の生産・販売に影響が出ることも想定される。トヨタの供給網を長年支えてきた最大の鉄鋼メーカーによる提訴の衝撃は大きい。

トヨタの宝山採用で動揺

 実はおよそ2年前、日鉄社内ではトヨタが宝山の電磁鋼板を使い始めたことに大きな動揺が広がっていた。トヨタは世界的な電動車シフトで電磁鋼板のニーズが急増する中、「調達先を広げて電動車を安定生産するため」と説明していた。

宝山は世界首位の中国宝武の中核会社
●2020年の粗鋼生産量
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出所:世界鉄鋼協会

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