この記事は日経ビジネス電子版に『中国恒大EV工場は鉄骨野ざらしだった 現場で見た「成長」のからくり』(9月29日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』10月18日号に掲載するものです。

世界が注視する不動産大手、中国恒大集団の経営危機。その実態を知るために重要なグループ企業がある。トップの許家印氏が「3~5年で世界最大のEVメーカーとなる」と宣言したEV会社、恒大新能源汽車集団だ。大風呂敷な目標だが、恒大のビジネスモデルを解読すると、許氏がそう言うしかなかった「事情」が見えてくる。

<span class="fontBold">江蘇省南通市にある恒大新能源汽車の工場建設予定地</span>
江蘇省南通市にある恒大新能源汽車の工場建設予定地

 9月下旬、中国江蘇省南通市にある恒大新能源汽車集団の工場用地を訪れると、目の前には奇妙な光景が広がっていた。

 だだっ広い敷地に無数の鉄骨が立ち、野ざらしになっている。作業員も建設機械も見当たらず、周囲は静寂に包まれていた。事情を聞こうとプレハブの建物の前で呼びかけてみたが、応える人はいない。

 恒大汽車は9月26日夜、上海証券取引所の新興ハイテク市場「科創板」における人民元建て株式の発行計画を断念したと発表した。同24日には高齢者向けリゾート施設に関するプロジェクトを一部中断したことを明らかにし、「資金注入がなければ資金繰りが破綻する」と投資家に警告していた。

老人ホームからEVメーカーへ

 恒大汽車は以前の社名を恒大健康産業集団といい、病院や老人ホームなどの経営を手掛ける会社だった。今回一部中断を発表した高齢者向けリゾート施設のプロジェクトは、その名残だ。

 かねてEV事業への参入意向を見せてきた恒大集団は、新興EVメーカーの米ファラデー・フューチャーに出資したが紛争に陥り、2018年末に和解した。19年にはスウェーデンのサーブを源流に持つNEVSを恒大健康が買収して、念願のEV事業に参入した。

 恒大健康は20年9月、恒大汽車へと社名を変更。同月、騰訊控股(テンセント)や滴滴出行(ディディ)、アリババ集団創業者の馬雲(ジャック・マー)氏の雲峰基金、米セコイア・キャピタルなどからの資金調達に成功したと発表している。経営トップの許家印氏は「3~5年で世界最大のEVメーカーとなり、10年後には年産500万台を目指す」と宣言していた。

 香港市場に上場しており今年4月16日には時価総額で9兆5800億円となって米フォード・モーターを上回る局面もあった。経営危機が表面化し、現在の株価は暴落した。

続きを読む 2/2 不動産とEV、異形のシナジー

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