この記事は日経ビジネス電子版に『デルタ減産と中国変調、復活の日本製鉄を脅かすリスク』(9月14日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』9月20日号に掲載するものです。

日本製鉄が自動車用鋼材の価格交渉で異例の強気を貫き、トヨタ自動車に大幅値上げを認めさせた。2022年3月期は3期ぶりに黒字となり、連結純利益が3700億円と大幅回復する見通しだ。ところが、新型コロナの変異株による東南アジアの工場停止や、中国の変調などの波乱要素がくすぶり始めた。

<span class="fontBold">生産活動が停滞する東南アジアでは熱延コイルの価格が軟調に推移</span>(写真=CFOTO/共同通信イメージズ)
生産活動が停滞する東南アジアでは熱延コイルの価格が軟調に推移(写真=CFOTO/共同通信イメージズ)

 8月下旬、日本製鉄とトヨタ自動車による2021年度下期の部品会社向け自動車用鋼材の価格交渉は、上期比1トン当たり2万円の「値上げ」で決着した。値上げ幅は10年度以降で最も大きいとみられる。

 日鉄が大幅値上げを求めた背景には、コロナ禍からの経済回復で原材料価格が急騰したことに加え、二酸化炭素(CO2)排出を抑える製鉄技術の開発など新たな投資の元手を確保する狙いもある。「自動車メーカーの高い品質要求に応えるため、技術や製品開発、設備投資にヒト、モノ、カネをかけてきた。値上げしなければこちらが倒れてしまう」とある日鉄社員は吐露する。

 「ひも付きを中心とする鋼材価格の是正はまだ途上」。日鉄の橋本英二社長は19年4月の就任以来、国内向け鋼材価格は世界的に見ても低いと繰り返し訴えてきた。実際、自動車用鋼板の価格は韓国鉄鋼大手ポスコなどより低く、日鉄の低収益性の要因の一つだった。

 「かつてない大なたを振るったことで交渉力が格段に増した」。SMBC日興証券の山口敦シニアアナリストはこう指摘する。日鉄は国内需要の縮小をにらんで24年度末までに高炉を5基停止すると決定済み。粗鋼生産能力は従来比で約2割減る。足元を見られる「弱み」が消え、供給量の限界を交渉の「切り札」として打ち出せるようになった。

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