この記事は日経ビジネス電子版に『スタートアップのためになる? SPAC導入論の「そこじゃない」感』(9月3日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』9月13日号に掲載するものです。

菅義偉政権下で6月に閣議決定した「成長戦略実行計画」に導入検討が明記されたSPAC(特別買収目的会社)。スタートアップの資金調達がスムーズになるとの期待があるが、米国では規制強化でブームは冷め気味だ。上場前に資金を供給しやすくなる環境の整備など、SPAC導入以前に克服すべき課題がありそうだ。

<span class="fontBold">日本では東証マザーズなどへの上場のハードルは低い半面、企業価値が小さいまま上場しそのまま伸び悩むケースが少なくない</span>(写真=アフロ)
日本では東証マザーズなどへの上場のハードルは低い半面、企業価値が小さいまま上場しそのまま伸び悩むケースが少なくない(写真=アフロ)

 SPAC(特別買収目的会社)は、企業の目利き力を持つ運営者が投資家から資金を集めて有望なスタートアップを買収し、被買収企業は煩雑な取引所の審査を経ずに上場して資金を調達できるという仕組み。米国やドイツ、フランス、韓国などが取り入れている。

 素早い上場でスタートアップが資金を調達できる点がメリットとされ、「公開価格が低すぎることで資金調達額が少なくなる現在の(日本の)上場の問題を解決する上でも意味がある」(成長戦略実行計画)という。

 日本のIPO(新規株式公開)では、初めて売買が成立する株価(初値)は、株を売り出す価格(公開価格)を48.8%も上回り、米国(17.2%)、英国(15.8%)と大きな差がある。スタートアップが得る資金は公開価格に基づくため、初値が高くても調達額は増えない。スタートアップ側には証券会社による公開価格の値付けへの不満があるようだ。SPACは、買収側とスタートアップの交渉で価格が決まるため納得感が高まると期待される。

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