この記事は日経ビジネス電子版に『脱炭素のカギは「レンチン」? 化学大手がマイクロ波に熱視線』(8月30日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』9月6日号に掲載するものです。

アクリル樹脂の新たなリサイクル手法を実証する設備が大阪市で稼働を始めた。廃材を加熱する際に使うのは化石燃料ではなく、電子レンジでもおなじみの「マイクロ波」。対象の物質に直接エネルギーを伝えられる特性が「脱炭素」に向けた解決策の一つになるかもしれない。

<span class="fontBold">三菱ケミカルとマイクロ波化学が設置した、アクリル樹脂のリサイクルにマイクロ波を使う実証設備</span>
三菱ケミカルとマイクロ波化学が設置した、アクリル樹脂のリサイクルにマイクロ波を使う実証設備

 アクリル樹脂のリサイクルにマイクロ波を使う実証設備を設けたのは、化学大手の三菱ケミカルと、2007年設立の大阪大学発スタートアップ、マイクロ波化学(大阪府吹田市)。アクリル板や自動車のランプカバー、水族館の水槽などに使うアクリル樹脂「PMMA」の新しいリサイクル手法の確立を目指す。三菱ケミカルの製造工場で生じる廃材や、ホンダとの連携で集めた廃車のテールランプなどをリサイクルする実証実験を21年6月に始めた。

 廃材に触媒を混ぜてマイクロ波で加熱する手法で製造したアクリル樹脂は、化石燃料で加熱する従来のリサイクル手法で製造したものと同水準の強度や透明度を持つという。その一方で、製造工程における二酸化炭素(CO2)排出量を70%以上削減できる見込みだ。

 世界全体では需要が300万トンを超えるとされるPMMA。その原料となる「MMA」で三菱ケミカルは世界シェアトップを誇る。マイクロ波でのリサイクルが実現できれば、「脱炭素」化を進めながら代表製品の競争力も落とさずに済む。同社はコストや品質、エネルギー消費量などを検証しながら、24年の稼働を目指してリサイクル工場の建設を検討していく。

 「他の産業は変わってきたのに、化学産業だけ変わっていない」。マイクロ波化学の吉野巌社長はこうした問題意識を抱えてきた。原油やナフサの分解過程といったコンビナートの上流では、伝統的に石炭火力で外部から熱を加えて化学反応を起こしている。

 ただし、こうした設備はエネルギーの利用効率が低い課題がある。対象の物質が入った容器ごと温めるからだ。そこで、マグカップに入れた牛乳だけが温まる電子レンジのように、容器内の物質をマイクロ波で加熱することを着想したわけだ。

 マイクロ波で加熱する大型設備を7年かけて開発し、14年に工場を設けたマイクロ波化学の技術には他の化学大手も注目している。14年に独BASFとポリマーの製造工程の効率化で提携したほか、17年には三井化学と資本・業務提携している。

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