この記事は日経ビジネス電子版に『トヨタも工場停止 デルタ型の猛威で東南アジアに部品不足の連鎖』(7月28日)として配信した記事などを再編集して雑誌『日経ビジネス』8月16日号に掲載するものです。
新型コロナウイルスの感染拡大が深刻な東南アジアで日系製造業のサプライチェーンが危機に直面している。厳しい封鎖措置や感染拡大の影響で部品不足が発生し、トヨタ自動車の工場も一部で生産を停止した。各国に拠点を置く製造業は今後、生産計画の本格的な修正を迫られることになるかもしれない。

東南アジア各国で新型コロナウイルスが猛威を振るっている。ワクチン接種の遅れも感染拡大に拍車をかけているとみられ、タイでは1日当たりの感染者数が連日、過去最高を更新。8月4日には2万人を超えた。5月まで累計感染者数が3000人に満たなかったベトナムも足元では同20万人を超えている。
各国が導入した封鎖措置により、日系製造業のサプライチェーン(供給網)が危機に直面している。影響を大きく受けたのが自動車メーカーだ。
●人口100万人当たりの新型コロナ新規感染者数

出所:アワー・ワールド・イン・データ
「トヨタは対岸の火事ではない」
トヨタ自動車はタイで一部部品の調達が困難になり、7月21日から同国内にある3カ所の生産拠点の稼働を一時停止した。部品を調達している工場で集団感染が発生し、当局から一時的な閉鎖命令を受けた影響という。さらにベトナムで現地生産されている縫製関連部品の調達が滞り、田原工場(愛知県田原市)など日本の3拠点でも一部稼働を停止した。同様の理由で日野自動車の古河工場(茨城県古河市)でも生産が一時止まった。
ホンダも半導体不足に加えて東南アジアにおける部品供給が停滞しているとして、8月2日から鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市)の稼働を停止している。三菱自動車は封鎖措置の影響でベトナム拠点の生産を止めている。
「トヨタの生産停止は対岸の火事ではない。自分たちもいつ生産できなくなるか分からない」。タイの首都バンコク近郊で自動車部品を生産する日系企業幹部はこう話す。この工場では刻一刻と変わる状況への対応に忙殺された。
最初の危機は工場のある自治体からもたらされた。ウイルスが持ち込まれるのを防ごうと、当局は県をまたぐ越境移動の禁止に動いた。この県には日系製造業が集積し、多くの従業員が近隣の県から通ってきている。仮に越境が全面的に禁止されれば、工場の稼働がままならなくなる恐れがあった。
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