この記事は日経ビジネス電子版に『経済回復の目安は接種率4割、緊急事態宣言は「時間稼ぎ」になるか』(7月13日)『東京で緊急事態宣言、酒類提供を一律停止 知っておきたい10のこと』(7月9日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』7月19日・26日号に掲載するものです。

夏休みを前に東京、沖縄に適用された緊急事態宣言が東京五輪の経済効果や旅行業界に与えるダメージは大きい。それでも決断した政府は8月中旬にワクチン接種率が4割を超えれば感染者数が減少に転じるというシナリオを描く。感染者が減れば経済も上向く。「4割超」まで時間を稼ぐような戦略だが、成否を分ける人流を抑えるのは容易でない。

菅義偉首相は「病床の状況などに改善が見られる場合は前倒しで解除することも判断する」と述べた(写真=アフロ)

 7月23日の東京五輪開会式まで2週間に迫った8日。新型コロナウイルスが沈静化しない現状を受け、12日から東京都で4度目の緊急事態宣言を適用すると政府が発表した。沖縄県が対象の緊急事態宣言も延長され、2都県の宣言期間はいずれも8月22日まで。五輪では多くの競技で無観客開催が決まり、経済を下押しする政治決断が続く。

 夏のイベントが集中する時期に東京と沖縄を対象にしたのは、両地域が人流抑制の観点で重要なためだ。東京都と沖縄県の人口は日本全体の約12%だが、東京・沖縄発着の旅行需要は日本全体の4分の1程度とみられる。

 沖縄の観光客は平時であれば年間約1000万人で、そのうちの2割が7~8月に訪れる。感染力の強いインド型(デルタ株)が広がる中、他の地域への感染拡大を防ぐためにも、両地域での強い措置が必要と判断した。

「疲れ」は目に見えて表れる

 だが、経済に与えるインパクトは大きい。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは、今回の緊急事態宣言による経済損失が東京都で9820億円、沖縄県で450億円となり、計1兆円を超えると試算している。2都県の経済損失は五輪の競技をすべて無観客で開催した場合の経済効果の6割に相当する計算になるという。木内氏は「宣言の期間延長や対象地域の拡大があれば、経済損失が五輪効果を上回る可能性もあるだろう」と見ている。

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