この記事は日経ビジネス電子版に『モノ言う財界総理、中西氏のラストメッセージ』(7月2日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』7月12日号に掲載するものです。

日本経済の再興という大きなテーマに向き合いながら、志半ばで亡くなった経団連の前会長、中西宏明氏。その発言は時に物議を醸しながらも、歴代の「財界総理」の中でも稀有(けう)な人柄と評価されている。今の閉塞感を打破したいとの思いを胸に、闘病しながら社会へのメッセージを発信し続けた。

<span class="fontBold">2020年2月、日経ビジネスのインタビューに応じた中西氏</span>(写真=的野 弘路)
2020年2月、日経ビジネスのインタビューに応じた中西氏(写真=的野 弘路)

 「新型コロナウイルスの感染対策を十分には主導できなかった」。2020年9月、経団連の会長だった中西宏明氏が安倍政権のコロナ対策に物申すと、首相官邸から経団連幹部に抗議の電話が来た。中西氏は裏ではなく表で意見表明することを好んだ。米国生活が長かった経験もあり、社会は議論の積み重ねで形作られていくとの信念を持っていたからだ。

 臆せず発言するのは経済界に対しても同様だ。「気付いたら日本の賃金はOECD(経済協力開発機構)で相当下位になってしまった」。今年1月、連合の神津里季生会長との労使トップ会談でこう語った。この発言がニュースで流れると、SNS上では「おまえのせいじゃないのか?」といった厳しい意見が飛び交った。日立製作所を率いる身として、発言がブーメランのように返ってくることも当然分かっていた。

 それでも大企業の方針を振り返り、転換を探る必要があると思っていた。20年7月にリンパ腫が再発し、入院しながら職務を続けることになった。この労使トップ会談も直前まで欠席する予定だったが、今自らメッセージを発しなければと、病を押して出席した。

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