この記事は日経ビジネス電子版に『中国の「三人っ子政策」がうまくいきそうもない理由』(6月8日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』6月14日号に掲載するものです。

長年「一人っ子政策」を推し進めてきた中国政府が3人目の出産を認めた。背景には急速に進む少子高齢化があるが、都市部での教育費の上昇などもあり効果は不透明だ。1人当たりGDPを先進国並みに引き上げる目標を掲げるが、「富む前に老いる」未来も現実味を帯びる。

<span class="fontBold">中国政府は3人目の子供の出産を容認。効果はあるか</span>(写真=AP/アフロ)
中国政府は3人目の子供の出産を容認。効果はあるか(写真=AP/アフロ)

 5月31日、中国の習近平国家主席が開いた中国共産党中央政治局会議は「1組の夫婦に3人までの子供を認める」と発表した。中国政府が約30年にわたって続けてきた産児制限、いわゆる「一人っ子政策」を転換して2人目の出産を認めたのは2016年のこと。だが、出生率の低下に歯止めがかからず、さらなる緩和に踏み切った。

 だが、単純に3人目の出産を容認しても、出生率が上向く見込みは薄そうだ。産児制限を緩和しても出生率が増加に向かわない根本的な原因は、一人っ子政策が長年続く中で、中国の社会と経済がすっかり少子化に最適化されてしまっている点にある。

 中国の若者が使うネット流行語として「内巻(involution)」という言葉がある。日本語に訳せば「不条理な内部での競争」や「内部消耗」といったところか。もともとは社会学の用語で、外部に発展する余地が限られた状態において内部における構造が複雑化していくことを指すという。

 中国の高校生は「高考」と呼ばれる全国統一大学入学試験に備え、早朝から夜遅くまで学校で勉強している。そこまで苦労して入った有名大学を卒業しても良い企業に就職できるとは限らず、それほど学歴が必要ない職場で働く若者も少なくない。ここまで過酷な競争をする必要があるのか、といった批判的な意味で用いられる。

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