東芝は4月14日、経営トップである車谷暢昭氏が辞任したと発表した。株主との対立で退任が有力視されていたが、古巣からの買収提案が決定打になった。今後も上場を維持するには、株主を納得させる成長ストーリーが必要になる。

「車谷さん本人は続投に意欲的だったが、追い込まれた。最終的に花を持たせようとして何とか形になった」。東芝経営幹部の一人は、今回の社長交代劇をこう解説する。
東芝の車谷社長兼CEO(最高経営責任者)が4月14日付で辞任し、綱川智会長が社長兼CEOに就いた。記者会見に登壇した永山治・取締役会議長(中外製薬名誉会長)は「車谷氏から辞任の申し出があり受理した。東芝の経営にもたらした新しい知見、経営再建の功績に敬意を表したい」と評価した。車谷氏本人は会見場に姿を見せず、次のようにコメントした。「激務から離れて心身共に充電したい。再生ミッションを成し遂げ、『天命』を果たせた」
永山氏は本人が納得した上での「円満辞任」だと強調したが、額面通りに受け取る向きはない。冒頭の幹部に加え、複数の関係者は交代劇が「必然」だったと口をそろえる。今年6月の定時株主総会で車谷氏が退任することは、既定路線とみられていたからだ。
過半数獲得を疑問視
理由は2つある。まずは主要株主との対立だ。東芝は上場維持のために2017年末に約6000億円の増資を実施し、アクティビスト(物言う株主)の出資を受け入れた。銀行出身の車谷氏は株主との対話役を期待され、18年に経営トップとして招かれた。
期待は裏目に出た。車谷氏は株主が納得する成長戦略を示せず、防御に終始。「対話そのものを避けるような姿勢もみられた」と関係者は明かす。20年の定時株主総会では、車谷氏の再任への賛成票は57%にとどまっていた。
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