この記事は日経ビジネス電子版に『モスの600円食パンは、なぜ金曜日限定販売なのか』(4月1日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』4月12日号に掲載するものです。

モスフードサービスが事前予約制により月2回、販売を始めた高級食パンの売れ行きがいい。初回の販売分は計画の4倍近い予約が入った。ただ、業績へのインパクトが大きいわけではない。異例の一手の狙いをひもとくかぎは金曜限定販売。コロナ下で「客を店に呼び込む」ための取り組みが始まった。

<span class="fontBold">食パン1斤600円。新規参入ながら強気の価格設定と業界は受け止めている</span>
食パン1斤600円。新規参入ながら強気の価格設定と業界は受け止めている

 商品名は「バターなんていらないかも、と思わず声に出したくなるほど濃厚な食パン」。愛知、岐阜、三重と北海道、沖縄、離島を除くエリア、約1000店舗で3月に発売した。商品名だけでなく、販売方法も特徴的で、毎月第2、第4金曜の月2回、事前の予約分だけが納品される受注生産になっている。

 モスのバンズを製造する山崎製パンに発注し店舗で販売する。価格は1斤600円(税込み)。高級食パンブームの火付け役となった乃が美の「高級『生』食パン」(同432円)に比べても4割ほど高い。初回となった3月12日に9万5000食、2度目の26日に4万7000食を売った。いずれも計画の2万5000食を上回る上々の滑り出しだとしている。

 ただ、仮に1年間、このペースで売れ続けたとしても売り上げは10億円ほどにとどまる。モスフードの連結売上高は689億円(2020年3月期)で、業績を大幅に底上げするわけではない。もちろん毎日売ればもっと売れるだろう。それでも月2回、金曜限定販売としたモスの狙いは売り上げではないようだ。

 「話題づくり、PR的な商材だと割り切っている」。営業本部付の吉野広昭グループリーダーは食パンを売る目的をこう説明する。「金曜日に帰宅する際、店頭で受け取ってもらい、週末に家族で食べてもらう流れを想定している」

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