この記事は日経ビジネス電子版に『産業スパイも震え上がる「本当にあった怖い裁判」』(3月26日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』4月5日号に掲載するものです。

社外秘の技術資料や顧客名簿を不正に持ち出して捕まる事件が2020年に過去最多を記録した。企業が苦労して培った知見を守るためにも、厳正な処罰をもって犯罪を抑止する必要がある。中国の転職先に技術資料を提供した疑いで逮捕された男に、このほど裁きが下った。

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京都地裁で、矢崎隆三氏(仮名)が持ち出したデータは「営業秘密」だったのかどうかが争われた(写真はイメージ)(写真=PIXTA)

 企業秘密を不正に持ち出した不正競争防止法違反(営業秘密侵害)で検挙された人数が2020年に38人となり、過去最多だったことが3月25日、警察庁のまとめで分かった。1月には警視庁が楽天モバイルに転職したソフトバンクの元社員を逮捕するなど、21年に入ってからも検挙は止まらない。

 危機管理コンサルティング大手、米クロールの片山浩樹日本支社代表は、「退職する社員に対して、過去に実際あった事例をホラーストーリーとして伝えることが、情報漏洩対策には有効だ」と言う。京都地裁で3月17日、そうした、産業スパイ行為を思いとどまらせる事件の判決公判があった。

 「主文、被告人を懲役2年、および罰金200万円に処する」

 入子光臣裁判長が告げる実刑判決を、被告人の矢崎隆三氏(仮名)は時折うつむきながら不安げに聞き入っていた。

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