この記事は日経ビジネス電子版に『トヨタが初の個人向け社債 低利率の「ウーブン債」は買いか』(3月9日)として配信した記事を雑誌『日経ビジネス』3月15日号に掲載するものです。

トヨタ自動車が資金使途をSDGsに絞った、初の個人向け社債を発行すると発表した。投資妙味がないと考える声が多く、同社の社会貢献の考え方に賛同する人がどれだけいるかが焦点になる。もっとも、資金調達の多様化に向けた、実験的な試みなのではと指摘する声もある。

 「あまり投資妙味がないのでは」「よほど余裕資金のある人しか買わないだろう」──。トヨタ自動車が3月2日に発表した初の個人向け社債の発行条件が話題を集めている。「ウーブン・プラネット債」と名付けられたもので、発行額は最大1000億円、期間5年で利率の仮条件は年0.05~0.15%。このほか外貨建て、機関投資家向けでも最大4000億円の社債を発行する。

 個人向けで調達した資金はトヨタのSDGs(持続可能な開発目標)にかかる幅広い取り組みに充てられる。未来のモビリティー社会の実現に向けて静岡県裾野市に建設する「ウーブン・シティ」での街づくりや、先端技術の実証実験への投資などを想定しているという。

豊田章男社長(左)も出席したウーブン・シティの地鎮祭

 日銀の低金利政策が長期化する中、個人向け社債は「銀行の定期預金よりも高い利回りが欲しいが、株式のような価格変動リスクを取りたくない」守りの運用を重視する投資家の支持を集めている。ソフトバンクグループが不定期で発行するものが有名で、直近では2019年9月に期間7年、利率年1.38%で発行した。

 また最近では、新型コロナウイルスの影響を受けた貧困家庭を支援する目的で、大和証券グループ本社が20年6月、3年で年0.30%、5年で年0.50%の社債を発行している。

 これらと比べるとウーブン・プラネット債の利率は低い。年0.05%は期間5年の個人向け国債と同水準になる。「日本を代表する大企業なだけに信用力は高く、利率が国債と同水準になってもおかしくはない」(大和証券の大橋俊安チーフクレジットアナリスト)ものの、個人投資家が求める条件とはかけ離れているだけに投資妙味がないと思う人が多いのも無理はないだろう。

続きを読む 2/2 社会的信用の獲得に活用
日経ビジネス2021年3月15日号 24ページより目次

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