タイヤ大手のブリヂストンは2020年12月期の最終損益が233億円の赤字だったと発表した。自動車各社の業績が復調の兆しを見せるなか、不振事業の減損損失が響き69年ぶりの赤字転落となった。日本を代表する高収益企業の異変には、過去の事業モデルと決別しようとの意図が込められている。
●ブリヂストンの最終損益推移

タイヤ大手のブリヂストンが2月16日に発表した2020年12月期の連結業績は、これまで高い収益力を維持してきた同社としては意外な数字が並んでいた。売上高に当たる売上収益が19年12月期に比べ15%減の2兆9945億円、最終損益が233億円の赤字(19年12月期は2401億円の黒字)だった。同社が最終赤字に陥ったのは1951年以来、実に69年ぶりとなる。
新型コロナウイルスの影響による販売不振などが要因として挙げられるとはいえ、競合の仏ミシュランは2020年12月期、売上高が前の期比15%減の204億ユーロ(約2兆6000億円)、純利益は同64%減の6億2500万ユーロと黒字を維持している。自動車業界では中国や米国市場を中心に販売台数が回復傾向にあり、製造業を中心に復調の兆しは目立っている。
業績の異変は何が原因か。損益計算書からその要因が見えてくる。同社では20年12月期から資産の減損判定が厳しい国際会計基準(IFRS)へ移行し、売上総利益からマイナスに働く「その他の費用」として1486億円を計上した。結果、営業利益は641億円と前の期と比べて8割減となった。
「その他の費用」の内訳は、中国でのトラック・バス向けの事業やロシアでの乗用車事業などの不振による減損損失が896億円、海外工場の閉鎖協議に関する引当金が428億円を占める。中国は新車市場が回復しているが、汎用品のタイヤでは現地企業との価格競争が激しく利益率は高くない。「タイヤを世界各地で大量に作って売る。そんなモデルが成り立たなくなっていた」(ブリヂストン)。稼ぐ力を取り戻すため、生産拠点の再編に踏み込んだ。
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