この記事は日経ビジネス電子版に『ソニー、「規律ある攻め」継続が生んだ純利益1兆円』(2月8日)、『通期上方修正のパナソニック、求められる「モグラ」の見極め力』(2月4日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』2月15日号に掲載するものです。

ソニーの連結純利益が2021年3月期に初めて1兆円を超える見通しだ。リーマン・ショック後の低迷期を乗り越え、時価総額もITバブル期の記録を更新して過去最高となった。ライバルのいないニッチ市場に行くのではなく、勝負すべき領域を見極めて攻める戦略が実を結んだ。

初めての純利益1兆円達成の見通しを示したソニーはITバブル期の時価総額をついに超えた(写真=共同通信)

 「ソニーグループの最重要戦略であり、変更はない」

 およそ10年前の2011年5月1日、ソニー副社長でゲーム子会社の社長を務める平井一夫氏(12年からソニー社長兼CEO=最高経営責任者、現シニアアドバイザー)は厳しい表情で記者会見に臨んでいた。ゲーム機「プレイステーション」向けのネットワークサービスが攻撃を受け、その時点で約7700万人分の個人情報が流出した可能性があると判明したためだ。

 前年にプレステの有料会員サービス「プレイステーションプラス」を始めるなど、ネットワークサービスを重視する戦略を打ち出していたソニー。個人情報の損害賠償を求める集団訴訟が提起され、サービスの存続すら危ぶまれる事態だった。平井氏は個人情報の流出を謝罪する一方で、それでも戦略に変更はないと言い切った。「サブスクリプション(定額課金)」という言葉が注目される前に始めた有料会員サービスを、その後も粘り強く続けてきた。

 新型ゲーム機「プレイステーション5」の立ち上げ費用がかさむ今期のゲーム事業は、これまでの実績を考えれば赤字に陥ってもおかしくない。それでも、営業利益は前期比4割増の3400億円になる見通し。それを支えたのがプレイステーションプラスだった。会員数が20年12月末時点で4740万人を突破し、ゲーム事業の屋台骨と言える存在に成長。投資と利益成長を両立できるようになった。

勝てる領域を選別して投資

全部門で安定的に稼げるように
●ソニーのセグメントごとの営業利益

 リーマン・ショック後の09年3月期に最終赤字に陥ったソニーは、長らく復調のきっかけをつかめずにいるように見えた。ところが、16年3月期に黒字に転じた後はとんとん拍子で業績が回復。21年3月期に純利益で過去最高を見込むだけではなく、全部門で安定的に稼げるようになった。

 復活劇の裏にあるのは、ゲーム向けネットワークサービスで見たような、「勝てる領域を選別し、そこを徹底して攻める」という一貫した戦略だ。特に吉田憲一郎氏(現会長兼社長CEO)が13年に子会社社長から本体に復帰してからは、投資効率を見ながら積極的に投資する「規律ある攻め」が顕著になった。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り2429文字 / 全文3574文字

日経ビジネス電子版有料会員になると…

人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

オリジナル動画が見放題、ウェビナー参加し放題

日経ビジネス最新号、9年分のバックナンバーが読み放題

この記事はシリーズ「時事深層」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。