二酸化炭素排出のコストを設定し、投資判断に使う動きが日本でも広がっている。事業部門や工場が、排出量の少ない設備を選択することを後押しする。 炭素価格という「アメとムチ」を事業や投資計画に取り入れる事例は増えそうだ。

(写真=Stanislav Kogiku/アフロ)
(写真=Stanislav Kogiku/アフロ)

 「将来を考えれば、インターナル・カーボン・プライシング(ICP)が必要になるんじゃないか」──。2020年7月に開かれた帝人のオンラインでの役員合宿。鈴木純CEO(最高経営責任者)はこう口火を切った。帝人は20年度からの3カ年の中期経営計画に、30年度に温暖化ガスを18年度比で20%、50年度に実質ゼロにする目標を盛り込んだ。議論の末、目標達成に有効な手段になるとしてICP採用が決まった。

 1月18日、菅義偉首相は施政方針演説で「カーボンプライシング(CP)に取り組んでいく」と表明した。政府による「炭素税」などの規制をCPと呼ぶ一方、企業自ら二酸化炭素(CO2)の排出をコストと位置づけるのがICP。社内で独自に設定した炭素価格をベースに、各事業部門が工場に設置する機器の選定など投資判断に用いる。

 炭素価格が費用として計上されるためICPが「ムチ」となる場合もあれば、排出量を抑える機器にプラスに働く「アメ」としての側面もある。

 例えばCO2の排出量が多い50万円の設備Aと、排出量は少ないが70万円の設備Bがあったとする。両方の価格にCO2排出量に応じた炭素価格を足し合わせた際、設備Bが安くなればBを選ぶことになる。環境政策や企業内制度に詳しいSOMPO未来研究所の松崎絢香研究員は「(ICPで環境投資の判断がしやすくなり)これまで指示を受けるだけの事業部門が主体的にCO2排出量削減に関われるようになる」と話す。

社内独自の「炭素税」を設定し 投資判断などに使う
●インターナル・カーボン・プライシング(ICP)の仕組み
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出所:環境省、SOMPO未来研の資料を基に日経ビジネス作成
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