この記事は日経ビジネス電子版に『いすゞがタイで絶好調 後押しした「新常態」需要』(2020年12月25日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』2021年1月11日号に掲載するものです。

コロナ禍や政情不安に揺れるタイの自動車市場で、いすゞ自動車が販売台数を大きく伸ばしている。2020年1~11月の累計では16年以来で最高の販売台数を記録した。都市から地方への人の動きやネット通販の隆盛など、新常態が生んだ需要が販売を支えている。

<span class="fontBold">タイで販売が好調な、いすゞ自動車のピックアップトラック「D-MAX」</span>
タイで販売が好調な、いすゞ自動車のピックアップトラック「D-MAX」

 日系メーカーの牙城であるタイの自動車市場が復活しつつある。新型コロナウイルスの感染拡大によって、観光を柱とするタイ経済は大きな打撃を受けた。アジア開発銀行によれば2020年の経済成長率はマイナス7.8%に沈む見通しだ。その中で底堅いのが自動車産業。タイ工業連盟(FTI)によれば20年11月の新車販売台数は前年同月比2.7%増の7万9177台と、18カ月ぶりに前年同月を上回った。

 けん引したのはピックアップトラックが主力のいすゞ自動車だ。同社の11月の販売台数は1万7577台と前年同月比で20%(約3000台)増え、シェアを4%拡大させた。市場全体の同月増加分を上回る伸びで、いすゞを除けば市場全体はマイナスだった。

 「新型コロナ禍を契機に生まれた新しい潮流が人気に火を付けた」。バンコクから北東に500kmほど離れたローイエット県のあるいすゞディーラーの販売員はこう話す。タイでは地方から首都バンコクへの出稼ぎ労働者が多かったが、職を失った人々が地方に戻り始めたのだ。タイの地方の主要産業は農業だ。新しく農家の仕事を始めるに当たり、農産物を積むことができ家族の移動にも利用できるピックアップトラックを購入する動きが出た。

 恩恵を受けたのが地方での販売に強いいすゞだった。同社は19年に主力車種「D-MAX」を8年ぶりに刷新した。「耐久性を高め燃費性能を改善した」(いすゞ広報)ことがコスト意識が高まっている地方の消費者の心をつかんだ。

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