2021年はどのような年になるのか。企業経営者や識者に一文字で表現してもらった。共通するのはコロナ禍からの復興と、産業構造の大転換となる脱炭素に向けた決意だ。20年に露呈した数々の課題を乗り越え、再出発への一歩を踏み出せるかどうかが問われる年になる。
2021年を一文字で表すと──。
日経ビジネス取材班は企業経営者や識者に聞き取り調査を実施し、漢字またはアルファベットで新年への期待や決意を示してもらった。
回答をもらった17人の中に、暗い一文字を掲げた人はいない。それぞれの考えは、①日本と世界を混乱に陥れたコロナ禍収束への願い、②環境分野を中心とした新領域に踏み出す──の2点に大別でき、当たり前の話だが誰もが少なくとも20年よりも明るい1年になることを望んでいる。
この1年のコロナ禍での苦闘は私たちも経営者も経験してきた通りだ。20年、日本の国内総生産(GDP)は率にして前年比5%強失われる見通しで、金額にすれば約30兆円減る。
難路だが2%成長に復帰

20年1~9月の間だけでも個人消費は約17兆円減、設備投資は約5兆円減。だがIMF(国際通貨基金)の試算によれば、21年、日本は2%台のプラス成長に復帰する見込みという。
無論、V字回復とは呼べないし、新型コロナウイルスとの闘いが長引けばその回復の幅も道のりもおのずと険しいものになる。とはいえ成長期待がゼロになったわけではない。
安藤忠雄氏

21年の一文字を集めるに当たって、唯一、文字が重なったのが「光」。日本証券業協会の鈴木茂晴会長と、建築家の安藤忠雄氏だ。鈴木氏は「コロナ禍の閉塞感の中でも世界が発展する光が向こうに見えている」、安藤氏も「ぶつかり迷いながら必死で生きる。そんな一人ひとりの行動が明日を照らす希望の光となる」と強調した。ともに苦境のこの局面でなければ、「光」という一文字は使わなかったはずだ。
ラム・チャラン氏

海外の有識者からも「光」に似た言葉が届いた。「Hopeful(希望が持てる)」の頭文字である「H」を掲げたのは、国際政治学者のイアン・ブレマー氏。経営アドバイザーのラム・チャラン氏も「厳しい状況から抜け出す未来を信じよう」と、「信」を21年の一文字にした。
日本・世界の今後の動向を確実に左右するのが、新型コロナのワクチンの存在だ。英国、米国など多くの国で市民へのワクチン投与が既に始まっている。日本でも2月中の接種開始に向けて準備が進んでおり、順調に行けば6月末までには8000万人が予防接種を受けられる可能性がある。
足元では東京都などで感染者の増加に歯止めがかからず、政府は1月7日にも首都圏1都3県を対象に緊急事態宣言を再び発令する。ワクチンの力なしに、1年延期された東京五輪・パラリンピックの開催に向けた視界は良くならないだろう。
いずれにせよ、ワクチン開発と普及を含め、経済活動と感染拡大防止を何とかして両立させることでしか、成長軌道への復帰は望みにくい。企業経営も市民生活も正念場。だからこそサントリーホールディングスの新浪剛史社長は「必ず“アフターコロナ”は来る。その時を見越して攻めに転じたい」とし、潮目の変化を丁寧に見極める考えだ。新浪氏の一文字は「攻」だった。

Powered by リゾーム?