三井不動産が首都圏で、飲食や衣料、美容といった多様な店舗を臨時に設ける「移動商業店舗」を開いた。外出自粛などによる消費低迷に対応すべく、需要のある場所へテナントを移動させる。不動産ではなく“移動産”──。「決まった場所に人を集める」という従来の事業の概念を打ち破る試みだ。

<span class="fontBold">三井不は商業施設「ららぽーと」などへの出店事業者に声をかけ、様々な商品・サービスがそろう「移動商業店舗」をつくる</span>
三井不は商業施設「ららぽーと」などへの出店事業者に声をかけ、様々な商品・サービスがそろう「移動商業店舗」をつくる

 長時間のテレワークでおなかが空いたから、自宅マンションの敷地に出ているトラック店舗で料理を買おう。ついでに、癒やしを求めてお香を購入。そうだ、靴もここで試着しておこう──。生活者の様々な消費意欲を喚起しようと、三井不動産が実験として取り組み始めたのが移動商業店舗だ。

 12月20日まで約3カ月間、グループで管理する高層マンションなどの敷地で開いた。対象エリアは東京都江東区のマンション「ザ・トヨスタワー」の他、中央区や板橋区、千葉市の計4カ所。10事業者11店舗が参加した。

 三井不は商業施設「ららぽーと」などへの出店事業者に声をかけ、参加を促した。飲食では煮込み料理やクレープ、衣料品ではスーツや靴。美容整体のサービスの他、お香の販売や包丁研ぎというユニークな店も参画した。

 飲食店がミニ店舗の形で移動するケースはよくあるが、三井不の場合は小さな商店街と呼べそうな多様性が特徴。須永尚ビジネスイノベーション推進部長は今回の取り組みについて、商業施設や入居テナントといった不動産を「移動産にする試み」と語る。

 三井不によると、売上高が予想の3倍を超えた店もあったという。「半信半疑な面もあったが、可能性を感じた」と話すのは、衣料品を扱うオンワードパーソナルスタイル(東京・港)の竹田哲哉ゼネラルマネージャーだ。

 同社はコロナ禍による客足の減少などで閉店を余儀なくされた店舗が少なくない。竹田氏は「来店者を待つのではなく、自分たちが出向くことで、顧客と新しい接点ができた」と話す。

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