この記事は日経ビジネス電子版に『忘年会、スルーどころか消滅? 居酒屋業界に厳冬の師走』(12月8日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』12月14日号に掲載するものです。
新型コロナウイルスの第3波で忘年会需要が激減し、9割の企業が今年は開かないという調査結果も公表された。昨年SNSで世間をにぎわせたのが忘年会スルー。忌避する風潮が広がる中で1度やめればそれが定着しかねない。代わって増える家飲みは、1年の憂さを晴らす役目を果たせるのか。忘年会需要の代替先は見えていない。

本来なら忘年会の季節である師走を迎え、サラリーマンが集う東京・新橋駅周辺の繁華街に立ってみた。12月初旬の平日の夜。飲み屋を探している人は少なく、客引きの店員は手持ち無沙汰な様子だった。
歩いている人に店員が「いらっしゃいませ」と声をかけても足早に立ち去る姿が目立つ。いくつかの居酒屋に聞いてみると、客席が70以上ある店で、2人組のサラリーマンが1組入っているだけの時間帯もあった。
2020年は新型コロナウイルスの感染拡大で、3、4月に見込まれていた歓送迎会のニーズが消滅した。日本フードサービス協会によると、パブレストラン・居酒屋の売上高は緊急事態宣言が出た4月が前年同月比で91.4%減、5月は90%減。10月でも同36.3%減だ。外食の他業態に比べ回復が鈍い。
東京商工リサーチが11月9日から16日にかけて全国の企業を対象に忘年会・新年会について調査した結果、回答した1万59社のうち88%が「今年は開催しない」と答えた。昨年、忘年会や新年会を開いた企業は78%だった。
忘年会を巡ってはコロナ前から否定的な評価が表面化していた。職場の忘年会を忌避するSNSの書き込みが昨年相次いだ。本音では行きたくないのに慣例として参加していた層に火を付け、「忘年会スルー」という言葉が話題となった。この傾向に拍車がかかり、今年開かないことが一過性のもので終わらない事態を外食業界は懸念している。
Powered by リゾーム?