「世界初」の自動運転車の発表に欠かせなかったのが法制度の整備だ。「17年に自動運転のデモを披露した時点で既に完成度は高かった」(ホンダ関係者)といい、技術的な壁は早い段階で越えていたとみられる。独アウディもレベル3の自動運転機能を実現したと報じられるなど、ホンダの技術力が突出していたわけではなさそうだ。ただそのアウディは今年、旗艦モデルへのレベル3の導入を目指していたが、欧米では対応する法制度が整っていなかったため延期を余儀なくされていた。
一方、日本は自動運転分野でリードしたいとの政府の思惑から、制度設計に前のめりだった。20年中のレベル3の市場導入を目標に、今年4月に施行された改正道路交通法で自動運転車の保安基準を策定するなど環境整備を進めてきた。「(1例目は)海外メーカーの車でもよかったが、ホンダが協力的だった」(国交省自動車局)ことが世界初の認可につながった。
普及はまだ先か
ただ今後、自動車各社が幅広いモデルにレベル3を導入するようになるには時間がかかりそうだ。日産の内田誠社長は12日の決算会見で「レベル3になるかレベル2.5になるか分からないが、プロパイロットを進化させニーズに合った商品を出していく」と発言。ホンダも当面はレベル3の普及よりも、技術開発のフィードバックで既存の運転支援機能(レベル2)を育てることにつなげる考えだ。
今回の発表に歩調を合わせるかのように、東京海上日動火災保険は自動運転中に発生した事故は保険料増額の対象にしないとする運用方針を発表した。レベル4、5になれば事故責任の所在など倫理問題が顕在化してくる。引き続き日本勢がリードを続けられるか、これからが正念場だ。
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