エイチ・アイ・エス(HIS)は2日、220億円規模の資本増強をすると発表した。約80億円の第三者割当増資のほか、澤田秀雄会長兼社長とファンドに約146億円の新株予約権を発行する。当面の資金繰りにもめどがついたと市場は受け止めたが、生き残りのため一段の構造改革が欠かせなくなっている。

有利子負債が積み上がっていた
●HISの有利子負債の推移
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注:2020年10月期は、7月末時点の数字

 旅行各社はGo Toトラベルで息を吹き返しつつあるがHISは事情が異なる。売上高の8割が海外旅行や訪日旅行で国内は1割弱。国内が約4割のJTBや6割のKNT-CTホールディングスに比べ、Go Toの恩恵が極端に少ない。

 その中で発表したのが香港のファンドを引受先とする約80億円の第三者割当増資と、澤田氏や同ファンドに発行する約146億円の新株予約権。岩井コスモ証券の川崎朝映シニアアナリストは「四半期ごとに業績が悪化していた。財務体質強化につながる」と話す。

 今回の調達がなければ、金融機関から最大895億円の即時返済を求められるリスクがあった。2018年に複数行から借り入れをした際、財務制限条項として「純資産を直前期の75%以上に維持すること」が義務付けられていた。

 20年10月期の連結最終損益は318億円の赤字(前期は122億円の黒字)の見通し。純資産が損なわれるため財務制限条項に抵触する可能性が浮上していた。最悪の場合、借入金を即座に返済しなければならない。手元資金は7月末で965億円。打開策をかねて探り、資本増強の発表に至った。

 新株予約権は行使されなければ純資産に計上されず、財務制限条項を満たせるかはいまだ不透明だ。だが、HISは支援者を探すのと並行して、金融機関と条項の変更を含めた交渉を進めるとしており、複数の証券アナリストが「恐らくクリアできるだろう」と話す。

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