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ソフトバンクグループ(SBG)が半導体設計の英アームを半導体大手の米エヌビディアに売却すると発表した。アームの顧客である半導体メーカーからは、自社が不利な立場にならないかと不安視する声が上がる。半導体関連企業のM&A(合併・買収)は安全保障の懸念から阻止される例もあり、実現するか不透明な面が残る。

(写真=左:AFP/アフロ、右:アフロ)

 「エヌビディアが我々にとって不利なことをしないかどうか、非常に警戒している。まずは様子を見るしかないが、彼らも相当難しいかじ取りを迫られるだろう」。SBGがアームの全株式をエヌビディアに最大4兆2000億円で売却すると発表したことについて、ある半導体メーカーの幹部はこう話す。

 半導体メーカーが警戒感を強めるのは、自社に技術を提供するアームが競合企業の傘下に入るからだ。エヌビディアのジェンスン・ファンCEO(最高経営責任者)は「アームの中立性を維持する」と強調するが、その約束がどこまで果たされるか。別の半導体メーカー関係者は「よっぽどはっきりしたファイアウオールを設けてくれなければ安心できない」と指摘する。

 アームは、電子機器の心臓部となるシステム半導体やマイコンに形成するCPU(中央演算処理装置)の仕様・設計図をライセンス提供する企業。半導体メーカーが採用するCPUのデファクトスタンダード(事実上の標準)となっており、アームのCPUに合わせたソフトや開発ツールが豊富に存在する。アームのCPUを採用した半導体の累計出荷数は2019年までに約1800億個。エヌビディアも任天堂のゲーム機「ニンテンドースイッチ」に供給する半導体や自動車の高度運転支援システム向け半導体に採用している。

 AI(人工知能)や画像の処理を高速に実行できるGPU(画像処理半導体)に強みを持つエヌビディアがアームを買収する狙いは、末端の機器からデータセンターやスーパーコンピューターにまで広がるアームCPUの搭載機器に、自社のGPUを採用してもらうことにある。ただ、エヌビディアが自社のGPUとの組み合わせが有利になるようにCPUやソフトを開発するようアームに仕向けたりすると、半導体メーカーが「アーム外し」に動く可能性は十分ある。