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新型コロナウイルスの収束は見えないが、中国を筆頭に各国は行動制限をどう解除するかを模索し始めた。秩序が崩れ、人々の暮らしは様変わりする。かねて指摘されるアフターコロナの世界が近づいている。何が求められ、どんな社会が待っているのか。識者に語ってもらった。(新型コロナウイルス問題取材班)

まちづくり 隈 研吾氏


「集中」は成立せず 徒歩圏の生活に 柔軟に使う空間を
隈 研吾[くま・けんご]
建築家、東京大学特別教授。隈研吾建築都市設計事務所を設立。国立競技場の設計にも携わった
(写真=J.C.Carbonne)

 コロナ後の世界がどのように変化するかを予測してみると、建物や都市を構築する価値観として、「自由」であることが何よりも重視されるようになるだろう。「誰もが好きな場所で暮らせる」といった自由がテーマとなり、テクノロジーがそれを可能にするのではないだろうか。

 20世紀型のオフィスや工場、都市は集中することに価値があった。容積緩和で超高層ビルの建設を可能にする特区を設け、経済の活性化を図るといった考え方もその一つだ。「大きな箱」に人が集まって働くことが効率的だと考えられてきた。

 これからは「一極集中主義」と「経済活性化」が一体という考え方が成立しなくなる。これまでも推奨されたコンパクトシティーのイメージが少し変わり、徒歩や自転車で移動できる圏内で働いたり、生活したりすることが求められるようになるだろう。

 こうした公共空間にWi-Fiなど通信網が整備され、人が自由に行き交うようになれば、生活スタイルも変わる。

 求められるのは、どんな用途にも使える建築物だ。昼間はオフィス、夕方以降はイベントや食事のスペースとして活用できるような、目的によって柔軟に運用できる空間が必要になる。空間を用途に分けて活用する「ゾーニング」のルールを緩くしていかないと、これからの都市に対応できない。こうした観点から都市をデザインし直す動きが出てくるだろう。



ベンチャー投資 アニス・ウッザマン氏


期待領域は非接触の配達、オンラインの対話、医療、教育
アニス・ウッザマン[Anis Uzzaman]
米ベンチャーキャピタルのペガサス・テック・ベンチャーズCEO。同社は170社に投資。米国で修士、日本で学士、博士号を取得した

 今も世界で50件前後の投資案件を並行して走らせており、4月にはモバイル動画の米Quibi(クイビ)に40億円近く投資した。宇宙会社の米スペースXにも25億円ほど追加で投じている。

 スタートアップの資金調達は一般的に1サイクルが12~18カ月。新型コロナが早期収束すると思えず、コロナ下で一度は資金調達しないといけない。経営者が運営を見直せないスタートアップは潰れる。こうした生き残りテストは強い会社と弱い会社を市場が区分けし我々にとってチャンスになる。

 コロナ禍がスタートアップ業界を大きく変えるのは間違いない。今後、成長が望めるのは在宅の作業を便利にする領域。例えばオンライン上でデータをやり取りしたり、ホログラム(立体映像)技術で部屋にいるように見せたりする技術。今の「Zoom」や「Teams」よりも円滑なコミュニケーションを実現する会社も出てくるだろう。

 非接触の配達サービスは今後、買い物の一般的な形として広がっていくはずだ。遠隔医療を支える技術ではインドネシアのヘルステックサービス会社「Alodokter」の時価総額が急上昇した。オンライン教育で双方向のプラットフォームを軽いソフトで実現できる企業も成長する。

 社会の問題点への理解は進んだと思う。その一つがリスク分散。各国は自立しようとしており、サプライチェーンを自国内に戻す動きはその表れだ。高齢化が進む日本や欧州では、AIとロボットの技術が進化するだろう。