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世界各国で都市封鎖から1カ月以上が経過し、解除する動きも出始めた。ただ中国でも経済活動のフル稼働は遠く、欧米でも足並みが乱れている。経済か人命か。二律背反の選択が各国を悩ませる。(新型コロナ問題取材班)

4月21日の中国・上海市街地での通勤光景。企業活動は徐々に再開へ(写真=Yves Dean/Getty Images)

 「武漢と全国の医療従事者の努力によって入院患者がゼロになった」──。

 4月26日、中国国家衛生健康委員会の米鋒報道官は、新型コロナウイルスの発生地となった湖北省武漢市ですべての患者が退院したと発表した。だが、症状は回復してもPCR検査で陽性が続く「常陽」と呼ばれる患者が含まれ、隔離は続くとみられる。感染力は低いとの専門家の解説を伝える報道が増えているが、ソーシャルメディア上では不安が広がっている。

 中国では1月末以降、全土に厳しい移動制限をかけ、企業の活動もほぼ止まった。それにより感染拡大をある程度食い止めたが、代償は大きかった。2020年1~3月の実質国内総生産(GDP)は前年同期比6.8%減と大幅に落ち込んだ。

 「復工復産」。封じ込めに手応えを感じ始めた中国政府がこのスローガンを掲げ早期の経済活動再開を呼びかけ始めたのは2月末ごろ。それからほぼ2カ月がたっても中国経済はアクセルを踏み切れていない。

残る再流行の火種

 「上海に戻るのは当分先になる。こちらで職を探すことも考えないと」。1月中旬に黒竜江省の実家に帰省した女性はこうため息をつく。勤務先の学習塾の再開許可がまだ出ないからだ。上海の学校は4月末から順次登校を再開することが発表されたが、学習塾の再開は学校の後まで許可されない見通しだ。

 上海市内で飲食店を経営する女性は、「前は予約でいっぱいだった金曜日夜も数組しか客が入らない。肺炎が怖いという気持ちは残っているし、景気がどうなるか分からないので外食を控えているのだろう」と嘆く。

 3月末には映画館に再度の営業停止が通達され、有名観光スポットも相次いで営業停止となった。北京市の商業中心地で日系企業の拠点も多くある朝陽区では海外から戻った家族の集団感染が確認され「高リスク地域」に指定された。「天津市などへの出張が制限されるようだ」(駐在員)

 「再封鎖」せざるを得ないのは、3月中旬から無症状感染者からの二次感染が複数確認されたためだ。4月8日にはロシアと接する黒竜江省のある市で市民の外出を制限し、生活に必要な企業以外の営業を停止させた。内モンゴル自治区にも感染者の入国が相次いでおり、国境付近に野戦病院形式の臨時医療施設が急きょ建設されている。

 中国国営の新華社によれば、4月15日時点の中小企業の再開率は86%。1割以上がいまだに操業を再開できていないことになる。中国人民銀行は2月1日には金融機関に対して1.7兆元(約26兆円)を供給し企業への貸し付けをしやすくしている。それでも預金を引き出そうと、甘粛省では現地銀行に長蛇の列ができた。上海でも「テナント募集」の看板を掲げる空き店舗が増えた。

 封じ込めよりも緩和の方が難しい──。この事実は、中国の次に感染が拡大した欧州各国を悩ませ、国ごとの格差を広げている。

日経ビジネス2020年5月4日・11日号 12~14ページより目次