収入減世帯への30万円の現金給付案が撤回され、国民1人当たり10万円が一律給付されることになった。公明党の強硬な要求に安倍晋三首相が折れ、補正予算案組み替えという異例の対応を迫られている。官邸主導の政治手法は揺らぎ始めており、今後の政権運営や「ポスト安倍」レースへの影響も必至だ。

<span class="fontBold">政権には「30万円案」と政治手法への批判が高まっている</span>(写真=共同通信)
政権には「30万円案」と政治手法への批判が高まっている(写真=共同通信)

 「国民から寄せられた様々な声や与野党の声も踏まえた。私自身の責任であり、おわび申し上げたい」

 安倍晋三首相は17日の記者会見で、減収世帯に30万円を支給する案を撤回し、10万円の一律給付に転換したことについて、こう陳謝した。

 対策費などを盛り込んだ2020年度補正予算案の国会提出直前に公明党の圧力に押し切られ、首相は目玉政策の修正に追い込まれた。いったん了承したにもかかわらず、公明党が土壇場で強硬に見直しを迫った背景にあるのが、「30万円給付案」への不満だ。

 公明党は当初から、緊急経済対策に1人10万円の現金給付を盛り込むよう求めていた。だが、一律給付には麻生太郎副総理兼財務相らが強く反対した。09年に麻生政権が公明党の要望に応じて原則として1人1万2000円の定額給付金を2兆円規模で実施したものの、世論から集中砲火を浴び、内閣支持率の急降下を招いた経緯があるためだ。

 自民党で対策案の取りまとめ役である岸田文雄政調会長も足並みをそろえ、4月3日に首相と岸田氏が減収世帯に30万円を支給する案で合意した。政府内では1世帯当たり20万円とする方向で調整が進んでいたが、岸田氏が首相に増額を要請し、上積みを勝ち取ったと説明されてきた。内幕を知る関係者は「首相側近や麻生さんで描いたシナリオに岸田さんが乗った。岸田さんの手柄にし、ポスト安倍候補として政治力をアピールさせる狙いだった」と語る。

次ページ 「根回し」は二の次に