新型コロナウイルスによる外出自粛で、ビール業界が苦境に立たされている。その中でも業務用ビールの比率が高いアサヒビールが被る影響はとりわけ大きい。延期された東京五輪のゴールドパートナーでもあるアサヒ。悪条件が重なり、シェア首位陥落の危機に瀕している。

<span class="fontBold">持ち株会社であるアサヒグループホールディングスの本社(東京・墨田)には、東京五輪のロゴが掲げられたが……</span>
持ち株会社であるアサヒグループホールディングスの本社(東京・墨田)には、東京五輪のロゴが掲げられたが……

 4月10日、ビール大手4社の3月の販売実績が発表された。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、夜の街から客足が遠のいている。ビール類(発泡酒、第3のビールを含む)の市場全体の2割程度を占めるとされる飲食店に卸す業務用ビールの出荷量が激減し、ビール各社は軒並み大きな打撃を受けた。

 酒類市場はここ数年、節約志向を反映して、家庭で晩酌をする「家飲み」需要が拡大してきた。コロナ危機はそれに拍車をかけている。最も影響が大きいのがアサヒビールだ。飲食店で特に高いシェアを誇るビールのトップブランド「スーパードライ」は、販売量の半数近くを業務用が占める。3月の販売数量は前年同月比で72%と大きく減少した。外食への強い営業力が、コロナ禍で裏目に出ている。

 一方、発泡酒や第3のビールは家庭用が大半で3月17日に発売した第3のビール「アサヒ ザ・リッチ」は2週間の販売が年間目標の4分の1を超えるヒットとなった。それでもビールの減少を吸収できず、今年からアサヒが金額ベースしか公表しなくなったビール類としての実績は同81%に沈んだ。

 2019年通年のビール類市場シェアで、アサヒは36.9%とトップに立つ。35.2%と1.7ポイント差に迫るのがキリンビール。販売数量の6割以上をビールが占めるアサヒに対しキリンは3割強。キリンは3月、第3のビール「本麒麟」が同131%と伸び、業務用ビールの減少を補った。同月のビール類の販売数量は同95%で着地。ビール類の販売数量を非開示とするアサヒの実績は80%台半ばとみられ、コロナ禍でキリン優位の傾向が出始めている。

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