日産自動車が3メガ銀行と日本政策投資銀行に5000億円規模の融資枠設定を要請したことが明らかになった。新車販売が激減し、欧米の工場は停止。「コロナショック」の出口が見えない中、経営再建が難航している。民間企業とはいえ取引先が多く経営が傾けば衝撃が大きい。銀行や国も不承不承ながら助けざるを得ない状況だ。

<span class="fontBold">臨時休館する銀座のショールーム「日産クロッシング」</span>(写真=アフロ)
臨時休館する銀座のショールーム「日産クロッシング」(写真=アフロ)

 「日産自動車から『部品の代金支払いを遅らせる』と言われないか心配だ」。少し前は冗談っぽかった旧日産系列の部品メーカー幹部の言葉が現実味を帯びてきた。主戦場である米国での日産の1〜3月の新車販売台数は前年同期比30%減。3月の中国の販売台数も、前年同月比80%減だった2月ほどではないものの、45%減と低水準だった。

 日産にとって、2月の時点では「中国マター」だった新型コロナウイルス。湖北省などにある中国4工場の操業が止まり、部品欠品で九州の工場も一時ストップしたが、再開への道は見えていた。ただ、新型コロナの勢いは止まらず、欧州、米国へと震源地が移行。経営に与えるインパクトは深刻化した。

 1年半前に元会長のカルロス・ゴーン氏が逮捕されて以降、日産はゴーン氏に近かった幹部陣を追い出し、経営方針を転換した。「量から質」に移行すべく米国で販売奨励金を引き下げるなどしたが、製品とブランド力の低さが露呈して販売が想定以上に減速。内田誠氏が社長に就任して初の決算発表となった2019年10〜12月期は、同期間として11年ぶりの赤字となった。

急激な需要減にみまわれ、資金繰りが課題に
●国内自動車大手の事業規模
<span class="textColTeal">急激な需要減にみまわれ、資金繰りが課題に<br /><small>●国内自動車大手の事業規模</small></span>
※東京商工リサーチ調べ、仕入れ先と販売先の1次、2次請負合計
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政投銀が参加する意味

 再建策は世界で1万2500人を削減するなど大規模なリストラしか見えていない。ただリストラにもお金がかかる。日産の手元資金は約1兆4000億円。自動車事業の融資枠も5000億円ほどあるようだが、コロナショックで生産減に拍車がかかり、設備と人員の過剰は以前とは違った次元になっている。

 日産は5月にも新たな中期経営計画を発表予定。20年3月期通期の決算が円滑に発表できるかも未定だが、「止血」には待ったが効かない。そこで必要となるのがさらなる資金の手当てだ。

 今回の融資の枠組みに日本政策投資銀行が加わることに関し、ある関係者は「いざというときは国が支援する、という形にしたいから」と話す。

 政府が全額出資する政策投資銀行は、政策的に重要なプロジェクトを支援することが目的で、中立性や公共性を重んじる。コロナショックにおける大企業への対応ではインフラである航空会社と協議を進めている。1民間企業である日産はなぜ、支援を受ける「資格」を持つのか。そこには、日本の産業構造のゆがみが透ける。

 日産は過去に国から見放されたことがある。1999年3月、仏ルノーが手を差し伸べてくれなければ経営破綻を免れなかった。事情をよく知る中央省庁の事務次官経験者はこう語る。「当時は雇用、設備、債務の3つの過剰が言われていた。自動車会社は数が多く、日産を守る理由は見当たらなかった」

 当時、国がそう割り切れたのは、自動車と並ぶ存在として電機産業があったからだ。2000年の製品出荷額は電機が約60兆円、自動車が約40兆円。しかし電機はその後、韓国・中国勢などに敗れて40兆円を下回り、逆に自動車は60兆円を突破。今や自動車は出荷額で全製造業の2割を占め、就業人口の546万人は全就業数の8%に当たる。

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